キリリク

□きちんと聞かせて?(キリリク)
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「政宗殿はどうなのでござるか?」
と、再度問い掛けてくる。
「…あぁ…うん。」
ムニャムニャと答えれば、
「政宗殿ォ!『あぁ、うん』って!愛が!感情が籠もってないでござる!!」
幸村は、政宗の耳元にも係わらずに大声を張り上げた。
「…うる…せっ!殺ス気か、てめェ…!」
頭の中に幸村の声が響き渡る。さっきまで極楽気分に居たのが、一瞬で粉砕された。ぎろり、と政宗は幸村を睨んだ。
幸村は尚も騒ぎ立てた。

…クソ!…こいつ!
「政宗殿は、某の――んっ!!?」
政宗は頭上で喚く幸村の頭を鷲掴むと、噛み付く様な口付けをする。
深く。深く。
舌を絡ませ、逃さないように。息さえも閉じ込めて。


幸村の顔が酸欠で赤くなってきたのを確認すると、政宗は手を離し口付けを解いた。
「っ…はぁ!ま、政宗殿…く、苦しいでござる!?」
「当たりめーだ、オレだって苦しいんだ。」
「それなら」
真っ赤な顔の幸村は、それこそ困惑した面持ちで政宗を見た。
政宗も幸村を見つめたまま
「てめぇだけが『苦しい』とか『辛い』とか…『好き』だとか思うな。アホウ」
そう、言い放つと政宗は再び目を閉じた。

「政宗殿…それは言葉通りに考えてよろしいか?」
サラサラと髪を梳かれながら、幸村の笑みを含んだ声が聞こえてきた。

政宗は何も言わなかった。
口元に笑みを称えるだけで、何も言わなかった。
「政宗殿ってば」
幸村も笑いながら、何度も政宗の髪を梳いた。


その表情は甘く、多分、他の誰も知らない顔をしているのだろう。
まとう空気が、やわらかで甘い。
言葉になんかならないくらい、とても甘い。


互いをどれほど欲し、想いあっているかなんて、それこそ。



だから、言葉に出来ないもの程、幸福なことだと知っている。



→あとがき
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