キリリク

□ご褒美(キリリク)
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しかし、政宗が『薬』と言っているのだ。もしかしたら、自分の為に高価な物を用意してくれたのかもしれない。
幸村はひとつ取り、口の中へ入れた。

――刹那。
「―――――!!!!」
血の気が引いた。全身から脂汗も滲みだしてきた。
「おい、大丈夫か?」
政宗が水を差し出すと、無言で頷きながら水を受け取り、口の中へと流し込んだ。
苦い。いや、苦いなんてモンじゃない。
人間が味わう領域を超越している。
「っま…政宗殿…!…こ、これは…っ」
涙目で咳き込みながら政宗を見ると、政宗は喉を鳴らしながら笑っていた。
「甘味好きのお前にゃ苦いだろうなぁ。まぁ、我慢しろ、夕餉にゃ完璧に治るから」
『ほら、もうひとつ』と、政宗は幸村の手元から薬を取り上げ、口元へと差し出したが―――。
「いいいいいらないでごさるぅぅぅ!!!」
頭から布団を引っ被る。
「おい、幸村」
政宗が布団を揺する。
しかし。
「苦いから嫌でござる!某、あの薬を飲むならこのままでいいでござるぅ!」
あんな苦いのを飲むなんて、嫌だ。
体内の全細胞が拒否していた。
「この野郎…。それでも紅連の鬼か」
政宗の呆れた声が聞こえた。何と言われ様と、あの薬は飲みたくない。


「…なぁ、幸村」
「いくら政宗殿の言う事でも、それだけは嫌でござる!」
「飲んだら御褒美やるよ」
ピクリ。
「褒美……?」
布団から顔を出し、政宗を見る。
「Yes、褒美。甘い、甘ーい褒美をやるよ」
そう言って笑った政宗は、自分の口に手を当てると、ゆっくりと唇を舐めた。
紅い舌が、ひどく艶めかしい。


――ゴクリ。
喉が、鳴った。
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