キリリク

□非正攻法な手段*(キリリク)
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手にした小瓶を見つめたまま、佐助は小さく呟いた。

「本当に効くのかなあ?コレ…」

小瓶の正体は媚薬。電光にかざしてみれば、微かにピンク掛かって見えた液体がゆらりと揺れる。
「…パチモンだったりして」
偽物だからと云って後には退けない。佐助には考え付く手段はコレしかなかった。

コトの発端は、付き合っている伊達政宗だった。

「伊達ちゃんって、マグロだよねぇ」

この言葉がスベテの引き金だった。
言わなきゃ良かった、と思ったとしても既に遅い。過日の日。覆水盆に帰らずだ。

「………ハ?」
「いやだから、マグロ。冷凍マグロ」
事後処理を(つまりコンドームやらナニやら)を始末しながら佐助は、ベッドに寝転がりこっちを見ていた政宗についつい言ってしまった。
「前々から思ってたけど受け身っての?や、男と付き合うの伊達ちゃんが初めてだから分かんないけど」

『マグロだよね、伊達ちゃんって』

言った言葉がコレだった。今思えば、とんでもない言葉を口にしてしまった。
言わなきゃ良かった、と思ったとしても既に遅い。過日の日。覆水盆に帰らずだ。

「……ハッ!」
ザクザクと突き刺さる視線に嫌な予感は的中した。
恐る恐る視線だけをその方角に向ければ、殺気に満ちた独眼が佐助を睨み付けている。
「ごごごごごめ!今のは「Okay…んなら、オレなんかとヤッてても面白くもなぁんともねーよな?」
違うって今のはコトバのアヤって奴で、と云う理由は通る訳もなく。

「Get out!!」

佐助はパンツ一丁のまま、政宗のアパートから真夜中に放り出される事となった。(注・真冬)


――それが三日前の事。
よく風邪を引かなかったものだ。それは誉めてやりたい。

「大体こんなもん、使わせる伊達ちゃんだって悪いと思うんだよね」
佐助は独りごちる。
政宗は抱いている最中、声を噛み殺す。愛撫している時も。
反応が鈍いわけじゃない事は知っているけど、気持ち良いか悪いかぐらいは知りたい。

「何だかんだ言ったってオレ様、伊達ちゃんの事好きなんだもん。やっぱり気持ち良くさせてあげたいジャナイ?」
誰に言うとでもない言葉を吐くと、佐助は目の前にあったアイスティーの中へ液体を全て注ぎ込んだ。


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