キリリク

□夏の記憶は陽炎(キリリク)
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そして、今現在。
「直江出せや、ゴラァァァ!出さねえか、上杉ィィィィ!!!」
羅刹と化した独眼竜とオレ様は、越後・春日山城にいる。

あの会話の後、
「ちょっと用事がある。ワリーけど、小十郎と碁でも打っててくれ」
なーんて真田の旦那に言ってその場を離れた竜の旦那は、光の速さでオレを捕まえてこう言った。
「テメェ猿飛〜、言ってる事が違うじゃねえか…アァん…?…どーいう事だァァ?」
「そ、そんな事言われても知らな…ちょっ!竜の旦那!頬に刀刺さってる!痛い痛い!」
「オレを差し置いて幸村と海に行くなんて…!許すまじ…直江兼続ゥゥ!!」
「いだだだだだ!!」
嫉妬と怒りに目の色を変えた独眼竜の刀がオレの頬肉を抉る。
痛いったらありゃしない!
その後、怒る独眼竜に脅されて、オレ様は顔に刀を刺したまま凧を操り上杉領まで飛ぶハメとなった。



……そして今に到る。

「ゴラァァァ!出てこいやぁぁ!」
ガンガンと竜の旦那が叩く度に、春日山城の城門は形を変えていく。
すると、歪んだ扉がアリエナイ音をたてて開いた。
「ずいぶんとふんがいしていますね、わかきりゅうよ」
現われたのは、のーんびりとした相変わらず口調の、軍神・上杉謙信がのーんびり出てきた。
バチバチ放電してる竜の旦那とは対照的に、軍神は笑顔だ。
「よぉ…軍神。さっそくでワリイんだが直江にツラ出し…」
「ハッハッハ!無敵の私は逃げも隠れもしない!!独眼竜!いざ勝負―、ッギャフフゥッ!」
背中に『ばばーん』って効果音背負って現われた直江兼続は、台詞を言い終わらないうちに、独眼竜の究極バサラ技で吹っ飛ばされた。
「よくもテンメェ!!」
そしてそのまま独眼竜も、恐ろしい跳躍をもって直江兼続を追撃する。
軍神と云えば、自分の部下が吹っ飛ばされたにも関わらず涼しい顔だ。

ヒデェと思う。

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