キリリク

□にゃんこにゃんにゃん!(キリリク)
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「………で?」
「こうなったんだ。本当だ、信じやがれよ小十郎」
小十郎にその言葉を吐いたのは、政宗だ。しかし、その眼前にいるのは――……。


猫である。
真っ黒な、隻眼の黒猫がちょこんと座布団の上に座っている。
「あっ!何だ何だァ!?そのツラはッ!信じてねぇな!」
「……いや、信じますよ」
何せ猫が喋っているのだ。しかも、政宗の声そのままに。
姿さえ見なければ我が主人。しかし知らない人間が見たら『ネコと会話をしているヤバい奴』と見られてしまう。
「オイ!聞いてんのか!片倉ァァァ!」
「痛い!」
政宗に猫爪ファントムダイブを頬にかまされ、小十郎の顔面は血塗れになる。
「オメエ、オレがCuteなカッコになったからって欲情し「してません!」
何処の世界に獣へ欲情する人間がいるんだ!
ああ!やっぱりどんな姿形になろうが、目の前にいるのは紛れもなく伊達政宗だと思い知らされる。
なんてったって、思考がブッ飛び過ぎだ!!
「…何だ、しねえのか。ちぇ」
「ちぇ、とは何ですか。人の事、何だと思ってんですか」
「ちょっとぐらいムラム「しません!」
ぴしゃりと政宗の言葉を小十郎は遮った。

ああ、頭痛がしてきたぜ…。
頭を押さえる小十郎を余所に、政宗はぶつぶつ。
「…ナンダよ。今、オレ全裸なんだぜ?マッパなワケ。ムラムラしねーの」
そんな事を云うが、小十郎の目には猫が毛づくろいをしてる姿にしか見えない。
ますます頭が痛い。

「……もっと他に考えること無いんですか、貴方は」溜め息と共に呟けば、政宗が「やっべぇ…!」と一言。
どうやら相当大変な事を忘れていたようだ。
慌てた様子で部屋中をぐるぐる駆け回り、柱を引っ掻き始めた(いや、猫の姿だからしょうがないんだろう)
「Shit…!しまった!どうしよう!」
ガリガリ、柱を引っ掻く。

ああ、高いんですよ。その柱(多分)

「一体どうなされたと云うんです」
ススキみたいになり始めた柱から主人を抱き離せば、
「今日、幸村が来るんだよ!!」
「…………。」
その時、片倉小十郎景綱(二十九歳)は、二度目の出奔を覚悟した。


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