キリリク

□繋ごう*(キリリク)
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――そうだ。

コイツが手を出してこないんなら、オレから出せばいんじゃねぇの?
ヤリタイ盛りだろ。教え込んじまえば……いや、でも待てよ?!
もし、だ。もし、無理矢理乗っかっちまったとして。
「……政宗殿!」
拒否られたどうする?

政宗の顔から、血の気が引く。
ダメだ。やっぱダメだ。
そんな事して嫌われたらどうすんだ。
「あの、政宗殿」
第一、そんなんオレのPrideが許さねぇ。がっついてるみてーじゃねーか!
「まさ「うるせーな!さっきから!こっちゃ考え事してんだよ!」
先程から何度か自分を呼んでいた幸村に、政宗は怒鳴る。
「これは…すまぬ。だが」
「アア!?だが、何だよ!」
激昂する政宗の手を幸村は自分の方へぐい、と引っ張る。
「だから…その…」
「――…っ、な」
唐突に掴まれた手に、政宗は戸惑う。
「っだ…だから、何だ!」
「手を繋ぎませんか、と申し上げたのでござる!」
ぎゅ、と繋いだ手に幸村が力を籠めた。
「祭りで人通りが多いのにも関わらず、気付けば政宗殿は往来で立往生している始末…。また、はぐれてしまわぬかと気になって仕様がないのだ!」
幸村を見れば、山のように手にしていた黄粉餅は無くなっていて、額にはうっすら汗が滲んでいた。息も上がっている。

きっと、自分が(よからぬ)考え事をしている間に幸村と距離が開いてしまったのだろう。
それで、慌てた幸村は捜し回ったと云うトコロだろうか……。

「………ワリィ」
呟くように、政宗は謝った。自分の所為で、幸村に余計な心配を掛けてしまった。

――が。
「でもよ、手……恥ずかしいんだけど」
あんなに繋いでほしかったもんだが、イザやってもらうと顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
ええ年こいた男二人が手を繋ぐ姿って……。
しかし、幸村は「何故」
と、拗ねた口調で聞いてくる。
「や…。だから、恥ずかしいって言ってんじゃねーかよ。人目が……あんじゃん」
繋がれた手から政宗が目線を反らすように上げれば、
祭りに行き交う人々がチラチラと好奇心を含んだ目を投げ寄越してくる。
幸村も、その人々の視線に気付く。
「な?だから…離せ。はぐれねぇよーにすっから……」
バツが悪そうに、幸村の掌の中で政宗が掴まれたままの手を動かす。
「……うむ」
政宗の気持ちを汲んだのか、幸村が手を離す。
しかし、その仕草には何処と無く名残惜しさが見えた。
「なれば…袖を。せめて着物の袂を掴んで下され」
「…ガキか!オレはッ」
そんな事、出来るか!と怒鳴れば、幸村が柔らかく笑った。


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