キリリク

□幸村の二乗(フリリク)
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何がどうなってこうなったかは全く分からない。
何時ものように朝起きて、何時ものように鍛練をし、何時ものようにオヤツを食べて……と、全く何時も通りの事をしていただけなのに。


「……何故、某がもう一人いるのだ」
「さぁ、何ででござろうな」
もう一人の幸村も首を傾げた。
朝、起きたらすでに自分が二人になっていた。
最初は佐助の仕業かとも思ったが、朝食の膳を引っ繰り返して驚く様を見る限り、佐助が扱う忍術の類では無さそうだった。
「…しかし…これでは」
「政宗殿に会いに行けぬでござる」
考えるコトは一緒らしい。
だが。
「某が政宗殿に会いに行く。お主が行くのは筋違いでござろう」
「言ってる意味が分からん!某とて政宗殿にお会いしとうござる!」
同じ顔で喧々囂々とやりあう二人。そして話は次第にオカシナ方角へ行き始めた。
どちらが会いに行くか、は良いとして。
どちらがより政宗をスキか、どちらがより政宗を愛しているか。
挙げ句の果てには――。
「…っ!某なら、政宗殿の首から舐め上げる。政宗殿は首を吸われるのがお好きだ」
「甘いなぁ。相手が何を好きだろうが、こちらの味に染め上げてしまえば関係無いことでござろう」
くく、と幸村が笑えば。
「しかし、それでは政宗殿の意志が無いではないか!某は政宗殿に、行為を強いたくはない!」
ーと、幸村が抗議をする。
そう。二人して《褥の時、どう愛撫するか》と云う話になっている。
「…しかし、だ。イヤだ、止めろと、言いつつもあの政宗殿がだ。言の葉とは裏に、某の手中で淫らになっていくのだ。それは、もう。羞恥に顔を染めてな」
「――な!は、は!破廉恥なっ!」
激昂する幸村に、「破廉恥とは心外でござるなァ。自分とてしているコトでござろう?」と、さも面白げに幸村は言った。
「まあ、お主のような?褥の主導権も握れぬ様な男に政宗殿を満足させる事など、到底無理だろうがな」
「なっ!そんな事ない!ある訳なかろう!」
「はっ!面白い!ならばどちらが政宗殿を満足させることが出来るか」
「良かろう!その勝負、受けて立つ!!」


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