キリリク

□褒美=御灸*(フリリク)
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風邪を引いた。
むしろ風邪などと云うものに掛かったことなどないのだから解らぬが、佐助が兎にも角にもやたら煩く言うのだから、やはり風邪なのだろう。

「いい?絶対に布団から出ないでオトナシクしてんだよ!」
「しかし、鍛練くらいは」
「これ以上悪くして、奥州に行けなくなっても知らないよ」
そう云われてしまうと、大人しく寝ていたほうだ良さそうだ。
幸村は世話好きの忍の言い付けどおりにした。



あれからどれくらい経ったのだろう。
佐助特製の薬は睡眠作用があるらしく、気付いたら眠っていた。
「morning 調子はどうだい?」
「まさ…むね…殿?」
目が覚めると、愛しい竜がそこにいた。


「鬼の撹乱ってヤツかねぇ。アンタが寝込むなんて」
水桶から布を絞り上げると、政宗は幸村の額に乗せた。
「このような、事。政宗殿にさせる訳には」
幸村が体を起こそうとするが、政宗はそれを制する。
「まだ本調子じゃねぇんだろ?寝てな」
「いや…しかし…」
恋仲とは云え一国の主人。
自分に仕えるワケでもない彼にこんな事を………。
「何だオメェ、飯食ってねぇのか?しょーがねぇな」
佐助が用意した粥を見つけて、苦笑しながら政宗は匙を取る。
「ほら、食わせてやっから。どーせこの分じゃ薬もまだだろ」
こんな…………。
ふぅふぅと粥を冷まし、政宗は幸村の口元に運ぶ。
……………。
「ほら、アーン」

こんな素晴らしい事なのか、風邪と云うモノは!!

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