キリリク

□空回り妄想オトメ(フリリク)
1ページ/3ページ

泣く子も黙る奥州筆頭。
独眼竜、と称される男。
自分の信じた道は、道を作ってでも進む男。
六爪流を自在に操り、あまつさえ雷も操る男。
伊達政宗とはそういった人間である。
聞いただけならどんな大男だ、修羅だと言われるかもしれないが実際はそんな男でもない。
――言い方に多少語弊があるかもしれないから訂正するが、【戦場以外は】だ。

そんな伊達政宗がゾッコン(古)、虜になっている男がいる。
「ハァ…逢いてェな…ハァ…」
口調振りから分かるように決して戦ごとではない。
「何…してんのかなぁ…」
畳に《のの字》を書き始める。
ここまでくれば戦などではない。
戦場を駆る竜、悪鬼羅刹修羅の伊達政宗をこのようにする男、甲斐の若虎こと、真田幸村が元凶である。

「逢いてぇなあ…行ったら驚くかな…」




『Hey!真田ァ、元気にしてたかい?』
『こ、これは伊達殿!』
『何、慌ててんだよ。いきなり来ちゃマズカッタかい?』
『……いや。某がずっと伊達殿の事を考えておりました故、まさか真になろうとは』
『…さっ…真田幸村ッ!(きゅうぅん!)』




「――……なーんって「いけませんよ、政宗様」
突然の小十郎の声に、政宗はぎょっと肩を竦めた。
「何だよ、小十郎!何時から居たんだよ!」
「ずっと居ましたよ」
そういえば居たよーな…、
真田の事で頭がいっぱいだった。
わりぃ、と云えば、小十郎は眉間に数えきれない皺を寄せて、溜息を吐いた。
「…まったく。オレは先代に顔向け出来ませんよ」
「何でだよ、立派な恋するオトメに育ったじゃねーが」
「オレが仕えたのは姫君じゃありませんよ!立派な男です!!」
「泣くなよ、小十郎」
「泣きたくもなります!!」
そんな主従漫才を繰り広げていると。
「殿。よろしいでしょうか」
「ん?」
障子越しに小姓が話し掛けてきた。問い返せば客人だと云う。
「Okey.すぐ行く。ホラ、小十郎も何時までも泣いてねーで行くぞ」
スタスタと部屋を出てってしまう主人に、小十郎は自分の髪がハゲ上がるのはそう遠くはない、と思った。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ