キリリク

□空回り妄想オトメ(フリリク)
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「――…さっ」
客間に居たのは真田幸村だった。
妄想でもなく、幻想でもない、本当の。正真正銘の真田幸村だった。
幸村は政宗を見ると、
「政宗殿、久方振りでござる」
と、言葉と共に、にこりと春風も顔負けの爽やかな笑顔を見せた。
「!(きゅん!)」
――笑っ…!!くっそぅ!やっぱり、良い男だ!!

政宗が両手で高鳴る胸を押さえているのに対し、後ろでは小十郎が頭を押さえている。こんなオトメ主人の姿が痛いのか、心労で髪が抜けるのか、どちらかと云えば両方だろう。

「ひ、さしいな。どうしたんだよ」
本当は『会いにきてくれたの?』って聞きたいのに、生来より意地っ張りなため素直には聞けない。
どうしても憎まれ口になる。
しかし、幸村はそんな口振りは気にせずに。
「実は珍しい品を頂きまして。是非、政宗殿にと」
そう言って幸村が取り出したのは、美しい破璃細工に入った酒だった。
「Beautiful」
思わず呟く。
「わいん、と云うらしい。酒も珍しいのですが、瓶の細工がとても美しかったので」
「これを…オレに…?」
聞けば幸村は笑顔で頷いた。
「Thank you…」
幸村から手渡され、政宗はぼうっとしてしまう。
本当なら『酔わせてナニする気だ?あぁん?(笑顔)』と、軽口の一つでも叩いてみたいところだったが…。
実際、本物を目の前にしてしまうと何も出来なくて、
政宗はただただ幸村を見つめてしまう。
「宜しければ是非御賞味下され。葡萄から作った薫りの良い酒だと聞いております」
その言葉を聞いて政宗はハッとして。
「そうだ!オマエも飲んでいけよ!」
「いや、しかし」
「Wait a miniut!」
そう云うと政宗は慌ただしく部屋を後にした。


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