キリリク

□再認識(フリリク)
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しかし、なんで小さくなってしまったんだろう。
「幸村」
未だ呆けている幸村に政宗は近付き、しゃがみ話し掛けるとぼんやりとした眼差しで政宗を見つめ返した。
「政宗…どの…」
切れ切れに呟きながら、幸村は政宗の膝に縋り付いてくる。
「何だよ、随分弱気だな」
「……気弱にもなりまする」
幸村の小さな拳が政宗の着物の裾を握り締めた。
「治んねぇワケじゃねーだろうし、猿飛が何とかしてくれっだろ」
そう云って政宗は幸村の髪を撫でた。トレードマークの後ろ髪が無いから、何だか変な感じた。
「…厭でござる…」
「うん?」
ポツリ、呟いた幸村に政宗は聞き返した。
「厭でござる!…この様な…体!」
声を荒げて幸村が顔を上げると、若干幼くなった双眸が涙に滲み始めていた。
「この体では…お館方様の役に立つ事も、甲斐に戻る事も…」
「…ゆき」
ぱたり、ぱた。と涙が幸村の頬に落ちる。政宗が涙を拭おうと手を伸ばした時、
「政宗殿の隣に居る事も出来ぬ!」
「うわっ!」
吠えた瞬間、勢いよく抱きつかれて政宗は後ろに倒れこんだ。政宗の上には幸村がいる。すでに、幼い黒眸からは大量の涙が溢れていた。
「…隣にって…そんな事、ねぇよ」
「そ…ッんな…!…駄目なのだ…!これでは!」
政宗の言葉を否定し、嗚咽に混じりながら幸村は続ける。
「この様な手では、体では…政宗殿を抱き締める事も出来ぬ」
「…幸村」
「…何も…何も出来ぬ」
そのまま政宗の肩口に幸村は顔を埋めてしまう。


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