キリリク

□幸せになるもん!*(キリリク)
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北条と武田がぶつかり合う戦場。
そこから五十間程(約90m)離れた場所に政宗は居た。

「居た!真田だ!」
「私にはさっぱり見えませんが」
嬉々として言う政宗に対し、小十郎は冷めていた。
どんなに目を凝らそうが、魔王が持ってる望遠鏡と云う物を使おうが、土煙血煙り上がる戦場、真田幸村の姿なんて分かる訳が無い。
「あぁ…イイ男だなぁ、オレ好みだよ…」
ほうっと呟く政宗に、小十郎はシカトを決め込む。
「あっ!手ェ振ってる!さーなーだーァ!!」
「見えないと思いますが」
隣でぶんぶん、手を勢い良く振る政宗にやはり小十郎は冷たく言い放つ。
大体、何故自分が此処に居るのか。

マッタク分からない。

隣で両手を胸元で組み、目をキラキラさせている主人に聞いた処で、十中八九嫌な答えが帰ってきそうなものだが、聞かない訳にはいかない。
「…で、政宗様。此処まで来た理由とは?まさか、我々だけで北条と武田の戦に乱入などと」
「するかー!!」
バチーン!と景気の良い平手打ちが小十郎の頬に炸裂する。
「何で恋…っ…恋人に会いにきたのに、そんな物騒な事しなきゃなんねーんだ!」
「お言葉を返すようですが、政宗様はいつ、あの小僧と恋仲になったのです」
張られた頬を擦りながら質問すれば、再び政宗の平手打ちが小十郎に飛んできた。
「小僧って言うな!」
ぷぅ、とむくれてしまい、政宗は木に繋いだ馬へとずかずか歩いていく。
「………。」
結局、小十郎は質問に答えてもらえず、両頬を殴られただけだった。

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