キリリク

□幸せになるもん!*(キリリク)
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「っらぁぁ!推せ推せェ!我が軍が有利だ!このまま突き進めぇ!」
「おぉ!」
幸村の声に続き兵士達の声が上がる。
紅蓮の鬼が先陣を切っているのだ。恐いものなどなかろう。
「旦那、今日は張り切ってるねぇ」
幸村と同じ速度で横に着いた佐助が問う。
「張り切らん訳にはいかんだろう。…政宗殿が見ている」
「えっ!?何処?!!」
その言葉にびっくりし、佐助は周囲を見回すが政宗の姿なんて見当たらない。
すると、幸村が槍で左の山を差した。
「あそこだ。片倉殿と一緒に居られる」
「見えんの!?」
佐助はじいーっと目を凝らすが、移動してるせいかぼんやりとしか分からない。
しかもそれが政宗かどうかも謎だ。
『旦那の妄想なんじゃない?』とでも言ってやろうと思ったが、命が惜しいのでヤメタ。
「……じゃあ、頑張んなきゃだね」
「うむ!」
にこやかに(返り血を浴びた顔で)政宗のいる方角へと幸村は手を振る。
「でもさ、旦那。竜の旦那とそんなに仲良かったっけ?」
一方的な恋愛じゃなかったっけ?と、佐助は思う。
「ー、なったのだ!」
「え?聞こえない!何?」
断末魔やら蹄の音が入り交じってよく聞き取れない。
「恋仲になったのだ!文のやり取りで!」
幸村が言い切った瞬間、佐助の手元にこの世とお別れを告げた敵兵が倒れこんできた。
何処か遠い眼差しで、佐助は幸村を見つめつつ呟いた。
「…あぁ…そう」
腕の中に敵兵を抱えたまま。

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