キリリク

□夢幻るぅぷ(キリリク)
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蒼空を雀が飛んでいた。
危うく幸村の意識も飛んでいくところだった。
「…………ハッ!な、な、な、何を言いだされるのですか!それはこの話の存在意義を否定致しまする!と、云うか!」
ガシッと政宗の両肩を掴み、さらに問いただす。
「何故そのような事を言われるのでござるか!?政宗殿は某に飽いたのでござるか?や、やはり片倉殿の方が…?!」
「No.No.No!違う、そうじゃねーよ。確かに小十郎はイー男だし、優しいし、アイツの黒龍も半端じゃねぇ」
「某の真田丸とてェェェェ!!」
まるで北斗の●もびっくりの服の破け方だ。先程まで纏っていた幸村の着物は木っ端微塵と化し、今政宗の目の前にいるのは褌一丁の幸村だ。
「政宗殿がいつも褥で『アァン幸村、お前のナパーム最高だぜぇ(はぁと)』と申されているではござらんか!」
「Shit UP!…ひどいぜ、幸村。そんな…二人だけの睦み合いの事を、そんなデケェ声でっ…!」
隻眼を潤ませ、政宗はくっと唇を噛む。
その姿に慌てた幸村が、
「あっ!…も、申し訳ござらぬ!決して悪気はなく…!むしろ…」
「…あっ」
(褌一丁の)幸村に抱き締められて政宗は胸をときめかす。
「日の本全てに知られても良いではありませぬか…。好いている者同士、何を隠す事があるのでござるか?」
「Oh…幸村。お前は人の皮を被った変態だけど、オレの事を愛してくれている気持ちだけは本当なんだな…嬉しいぜ……でも!!!」「ぐはぁぁあ!」
思いっきり政宗に突き飛ばされた幸村は、二、三回転がって顔面から庭へと落ちた。
「ダメだ!ダメなんだ、幸村!分かってくれ!!」
はらはらと人魚姫風に真珠の涙を流しながら、政宗は頭をぶんぶんと振る。
しかし、そんなもので納得する幸村ではない。
「分からぬ!何故愛する者同士が理由もなく離別せねばならぬのでござるかぁ!?」
幸村の顔面は庭の玉敷の砂利で擦り傷だらけだ。
「理由が無いのならその話は…「ある!」
血だらけ幸村の顔を政宗は押し退けながら、きっぱりと言い放つ。
「そ…その…理由と、は…」
「…脱マンネリ(ボソ)」
「は?」
「脱マンネリだよ!いいか?!世間じゃ《小十政》だの《親伊達》だの《佐政》だので大賑わいだ!feverだ。それこそPartyだ!」
政宗はハッと鼻で笑い飛ばすように言う。
「いいか?!そんな中でもオレ達がやってこれたのは数々のシュチュをやってきたからだ!」
ぐっと拳を構え政宗は尚も力説する。
「タイムスリップはもちろん、幼少ネタ、メイドに果ては獣人化まで…!もう、やってねぇのは女体化ぐれぇなモンだ!」
「しかし…だからと言って離別する理由…ぐはぁ!」
死近距離で放たれた政宗の拳が、幸村の米噛みを見事に捕らえた。
「女体化したらそれはオレじゃねーだろ!イヤなんだよ!お前がっ、お前が…っ!」
「…政宗…ど、の」
幸村は焦点の定まらぬ目で、耳から血を流しながら政宗を見遣る。綺麗な川の向こうで親父が笑っている。
あぁ、親父殿。なつかしゅうございますなぁ。
「お前が!…お前のその腕がオレ以外の誰かを抱くなんて…ッ」
政宗の告白は、あの世で再会していた幸村パパを殴り倒す勢いで帰るほどに幸村の意識を正常に戻した。
「政宗殿…。それ程までに…某を…」
血塗れの腕にそのか細い体を抱き締める。
「当たりめーだろ…好きじゃなかったら言わねー…」
政宗も幸村(全身擦り傷&血塗れ)の逞しい胸へそっと頬を寄せ、顔を赤くした。
「政宗殿がそれ程思い詰めていたとは…幸村気付かなんだ。申し訳ござらぬ…ならば…」
「?…幸、村?」
幸村は胸に抱いた政宗をそっと離すと、政宗の部屋へ歩きだした。
そして帰ってきた幸村が手にしていたのは政宗の愛刀・亜羅棲斗流だ。
そのまま無言で庭に下りて刀を振りかぶると―――。

「さようなら、源二郎!こんにちは!幸子ォォ!」




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