キリリク

□恋日和(キリリク)
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「―う、わっ!?」


あまりにも突然の事だったので、政宗は変な声を出しながら前方を歩いていた幸村に激突してしまった。
「ど、どうなされた?政宗殿」
いきなり背中から突進してきた恋人に幸村は振り返り「ああ」と納得する。
見れば片足をぴょんぴょんと跳ねながら、手に草履を持っていた。
「鼻緒が切れたのでござるな」
「Oh〜…ツいてねぇぜ」
ちぇ、と政宗は舌打ちしながらぴょんと跳ねる。
その仕草が何処となく可愛らしく、幸村は笑う。
「何が可笑しいんだよ」
「何でもないでござる。それより政宗殿、それでは不便でござろう?」
手を差し出して、幸村は政宗の体を支える。
「ああ…ワリィけど、そこら辺で…」
政宗が腰を下ろせそうな場所を探そうとした矢先、幸村がいきなりしゃがみこんだ。
「What's!?」
政宗の腕は掴んだままなので、倒れる事はなかったが。
「何だよ!急に」
「政宗殿、こちらへ足を」
幸村は座した膝を軽く叩いた。
「…なっ」
幸村の思いがけない言動に、政宗は胸を鳴らす。
「さぁ、そのままでは辛いでしょう」
そんな政宗の胸中も知らずに、幸村は笑いかける。
その屈託のない笑顔は、政宗にとって一番の弱みだ。
だから。
「…おう」
小さく呟いて政宗は幸村の言う通りにした。


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