キリリク

□恋日和(キリリク)
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幸村の肩に手を付き、片足を膝へと乗せる。
こんな風にかしずいた幸村を見るのは初めてだった。
上から見下ろす、といった事が余り無いためか政宗はしげしげと幸村の動作を見つめる。

「手ごろな布もありませぬし…これで代用致しますか」
「あ」
《代用》と言って幸村が取り出したのは、自分の髪紐だった。
ぱさり、と束ねていた銀煤の髪が無造作にばらけた。

政宗の心音が跳ねる。
幸村の髪は好きだ。
犬の様にふさりとして、それでいて柔らかく幸村と同じ太陽の匂いがする。
幸村があまり髪を解く事はない。それは褥を供にしてもそうだ。
政宗とて、こういった関係になって数えるくらいでしかないから、思わず《別人》のような錯覚を抱いてしまう。
きゅ、と肩に置いた手へ無意識に力が籠もったのか、
「政宗殿?」
訝しんだ幸村が顔を上げた。
「…なんだよ」
何でもない様に、そっけなく言葉を反す。
しかし、こんな言葉は無駄だって、きっと幸村とて分かってはいそうなんだろうけど。
天まで高いPrideってやつは、どうしようもない。
これがオレってヤツなんだから。

幸村は暫らく政宗を見ていたが、小さく息を吐いたかと思いきや。
「…悪い御人だ。せっかく我慢していたのに」
そう言って政宗を掬い上げる様にして、横抱きへと抱えた。
「ハ!?え、オイ!何のコトだ!?」
突然の幸村の呟き、そして行動に政宗は慌てた。
こんな真っ昼間の、山道とは云え、何時誰が通りがかってもおかしくない城への帰り道。
奥州筆頭が男に姫抱きにされているのを見られたとなっちゃ、珍事である。
慌てる政宗を余所に、幸村はさらりと告げる。
「政宗殿が悪いのだ。」
悪い、と云われても政宗には何の事だかさっぱり。
心当たりがあるとすれば―――。


「真っ昼間にサカッてるテメーの方がワリーに決まってるだろうがぁぁぁ!」
腕を振り上げて幸村の横っ面を殴ろうとするが、ぎゅっと体を折るように抱かれて腕は幸村まで届かなかった。
五指の力なら政宗の方が強いが、腕力は幸村の方が上だ。
睨み付けるようにしてやれば、何時もの屈託のない笑顔。
《別人》なんかじゃない。
オレが知ってる幸村だ。
オレだけに見せる笑顔。
政宗は溜息を一つ吐いて、観念したみたいに言う。

「…外なんてイヤだからな」
「了解したでござるよ」

抱き抱えられたまま帰路に着く。
町娘みたいだけど、それもまいっか。
たまにはこんな恋綴りみてぇな日があっても。
政宗は手にした草履をブラブラさせながら、思った。

………………………………
ナヲコ様!すみませんすみませんー!!!(バンジー切腹)
お待たせしたうえに、リクに添えず……!破廉恥まで持ち込めませんでした!
も、本当に申し訳ないです…!これからも精進いたしますので、見捨てないで下さいまし!
リクありがとうございました!!

読んで下さった皆様へ。
このダテは乙女なのか…書いてる本人が一番謎です。
幸村は髪紐解いても性格変化しません。あのままです。
楽しんで頂ければこれ幸い。有難うございました!


※小説のお持ち帰りはナヲコ様のみ可でございます。

2007 9 13.
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