キリリク

□きらいきらい、すき(キリリク)
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「ごちそーさま!」
ぱん!と小気味いい音を立てて、幸村は夕食の挨拶をする。
「さっすが政宗、料理ウマイ!綺麗だけじゃないよなァ」
立ち上がり食器を片付けようとする幸村に、
「待てや」
ドスの効いた声で政宗が幸村にストップを掛けた。
まるで地の底から這い出て来たかのような政宗の声に、幸村は硬直する。
「…な、何?皿洗いならオレするよ?」
「No」
幸村の言葉を短く切ると、政宗はテーブルに残された皿を指差した。
「残ってる」
指差した皿の先には、ラ・フランス。品種改良された高級洋梨である。
「………お、お腹いっぱいなんだよな」
「たった二切れだ。食えるだろ?」
「いや…え、えっ…と」
デザートにと、用意したラ・フランス。しかもそんじょそこらのモノじゃない。
わざわざ、地元仙台にいる小十郎にムリを言って送ってもらった最高級品だ。
それなのに。
「…まさか、オメエ食えねぇと「……わ、悪い!ごめん!」
皿をその場に落とし、幸村も土下座をして謝る。
「苦手なんだ!ラ・フランスだけは!」
「油味噌は食えるのにか!?」
油味噌―、これもまた仙台から取り寄せた。
しかし、これは違う。どこにでもあるものだ。
ラ・フランスとは格が違う。
それなのに!!!
「嫌いなんか!食えねーってか!!」
「だから、ゴメンって!どうしてもダメなんだ。なんか…痺れる甘さっていうか…。そ、それがダメなんだ!ゴメン!」
「……!!」
幸村の言葉に政宗は絶句した。


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