キリリク

□きらいきらい、すき(キリリク)
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その日、政宗はショックだった。
「政宗ぇー、ゴメンってばー!開けてってばー!」
幸村を殴り、マンションから締め出しても気分は晴れなかった。


『政宗の手料理が食べてみたいナァ』


幸村と付き合うようになって、初めて言われた台詞。
少なからず心踊った。
しょうがねえな、なんて憎まれ口を叩きつつも、約束の日の十日前から準備をした。
時季が外れているから入手は難しいと小十郎に言われたが、なんとか頼み込んで地物を送ってもらった。
そ・れ・な・の・に!!
嫌いだと抜かしやがった!
「何だよ!せっかく…!!」
喜んでくれると思ったのに…。

『ゴメン!嫌いなんだ!』
衝撃の一言。
油味噌も、ホヤの酢の物も、ずんだも食ったくせに。
なのに、何で!
「珍味は食えんのに、何でfruitsは食えねぇんだよ!!」
普通逆だろ!と嘆きながら政宗は机に突っ伏す。
「……。」
一人の部屋は無駄に淋しい。さっきまで楽しかったのに。
ちらり、と政宗は玄関を見遣った。


「………〜政宗ェ」
未だに、追い出したドアの向こう側からか細い声で自分を呼ぶ声が聞こえる。
幸村の、この声に自分は弱い。
どんなに怒鳴りつけても、喧嘩しても、幸村にこんな風に呼ばれると。
「……Shit!」
『ああ、オレってツクヅク幸村に弱ェ…』
惚れた弱みとは恐ろしいもんだと、溜息を吐いた。
政宗は椅子から立ち上がると、イライラしながらもドアを開けた。
「政宗!」
「風邪引くから早く入れよ」
ぶっきらぼうに言い捨てて、部屋に戻ろうとする政宗に背後から幸村が抱きついてくる。
「ッ…おい!」
「こーやって政宗に暖めてもらうからいい」
肩口に顔を乗せて、幸村は笑う。
その言葉だけでも熱が上がってしまいそうで、政宗は「バカじゃねぇの!」と照れ隠しに、幸村を罵倒する。
たが、幸村は「至って本気」と政宗の体に回した腕に力を込めた。
「と、その前に」
アレ。と幸村がテーブルに残された皿を指差す。
ラ・フランスの皿だ。
「What's…?…どーしたよ」
「食べさして?」
笑いながら幸村は言う。
「政宗が食べさしてくれるんなら、食べれるかもしんないから」
「…何だ、そりゃ」
嫌いなら、無理して食わなくたっていいのに。
けれど幸村は、まるで雛鳥のように政宗の肩口で、
「あーん」
と口を開けている。
思わず苦笑する。

何だかんだ言っても、幸村もオレに弱い。
多少の、イヤ、大分ムリならする。
そんなところもスキだ。(言ってやらないケド)
「チッ…しょーがねーヤツ」
フォークで一口サイズに切って、幸村の口に入れてやる。
「!!……あまッ」
「おい…無理すんなよ?」
「平気…もいっこ…あーん」



何だかんだ云いつつ、涙目になりながら全部食べた幸村に、軽く口付けた。
無茶をさせた礼だ。
オレからの口付けは初めてだったもので、幸村はビックリしつつも、オレの顔をマジマジと見つめてきた。
あんまり見られると、した事が途端、恥ずかしくなってきてしまい、
「ご褒美だよ」
と、吐き捨てるように言ってみれば、
「じゃあもっとちょうだい。今オレのキス、痺れるくらい甘いよ?」
そんな嫌味を含ませながら、最高の恋人は最高級の口付けを寄越した。



………………………………
燵也様!
おまたせ致しました!リクに添えた部分は、幸村が「あーんv」言ってる場所だけですね…!
すいませんでした!甘さ度合いも未熟です(うぅ!)
甘さはどこに売ってるのかな…!!
何はともあれ、リク有難うございました!


☆読んで下さった皆様へ☆
甘いのを頑張ってみた結果、コレ!も、どうなんだよ…。
ちなみに、ラ・フランスが嫌いなのはこの話のみです。他は何でも食べます。
この後、政宗さんが本当のデザートって事で(笑)

楽しんで頂ければ幸いです。
読んでいただいて、有難うございました!


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