モノオキ
□天井*
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夢を見ていた。
とても幸せな、でも、それでいて悲しい感じの夢だった。
天井が、視界を支配した。
いつも見慣れた筈の天井なのに、何処か違う。
―――広い。
天井が広く感じるのだ。
紛れもなく、自分の居場所だと認識し始めた風景なのに。
幼き頃ならいざ知らず、元服を終えた自分がこの部屋を広いと感じるのは、些か奇妙な話だ。
――押し寄せる静寂。
でも、それはきっと一人だからだ。
醒めやらぬ思考力でも、答えは簡単に出た。
夢の中で見上げた天井は、けしてこんな静寂とした感情を呼ぶものでは無かったから。
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