モノオキ

□Fake drunkard
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―――こんなんで潰れるたぁ、思わんかったんだよなぁ………。


大広間に転がった酒瓶や、徳利に囲まれるように大の字になって寝ている我が主人の姿に、小十郎は目を疑った。

普段は大抵の酒では決して潰れない。
許容を超える事があれば、それ以上は飲まない。

――それなのに。
「梵も…疲れてたんかなぁ……。」
成実が合徳利を抱えながら、目下で寝息をたてている主人の頬をつつく。
「全然起きねぇもんなぁ」
つついた成実の手を煩そうに払い除け、小さく呟きながら寝返りを打った。
「ハハハッ!こーやってみりゃ独眼竜も片無しだな。年相応のガキだ」
「お前な……」
隣で笑う成実を睨むと「ヤベ」と、一言呟きながら目を逸らした。
「…しかし、こんな所で寝られては風邪を召されてしまうな。取り敢えず、部屋に運ぶか」

暑くなって脱いだのか、主人の薄羽織は遥か彼方にあった。
全く、幼くとも城主。体には気を遣ってほしいものだ。
――小十郎は苦笑しながら、主人の薄羽織を手に取った。

「成実、俺は寝所の用意をしてくる。政宗様を運んで来てくれないか。」
「あいよ」
そう言い残して、部屋を後にした。

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