モノオキ

□Fake drunkard
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――― 一刻後…。


「成実はどうしたんだ…?」
寝所の用意をして待っているが、成実が来る気配が一向に無い。
心配になり見に行ってみれば、成実が主人と悪戦苦闘していた。


「…何をしてんだ、お前は…」
「あ!小十郎!助けてくれよォ〜。梵、酔ってるもんだからさぁ、一向にままならねぇンダよ」
成実が立ち上がる反動で持ち上げようとするが、グニャリとまるで人形の様に主人の体は、途端に均衡を崩し、前のめりになって倒れこみそうになる。
慌ててその体を支えた。
手を離せば、重力のままに崩れ落ちてしまいそうだ。

「…ダメだわ、コレ。」
「…お前、最初から諦めてるだろ」
あんまりにも、呑気な成実の声に俺は冷たい一瞥を呉れると、「そんなコタァないよ」と言った。
「ま、でも小十郎が何とかしてくれるかなー、とは思っているけどね」


ヤレヤレと思う。
やっぱりこいつは最初から何もする気がねぇんじゃねぇか。

小十郎は手を下に伸ばすと、今度は主人の両膝を掬い上げる様にして、身体ごと持ち上げた。

――横抱き、いわゆるお姫様だっこというやつだ。
肩の後ろに腕を回して、脚を掬い上げて、抱え上げた途端に下がった頭がぐらりと揺れ、白い顎が仰け反り、それが目につく。

反動を付けてそれを何とか抱え直した。
その間も主人は起きる気配を見せない。
眠る子猫みたく、くたりと身体を預けている。
首を傾げ、こめかみを胸元に寄せて、すっぽりと小十郎の腕の中へと収まっている。
「イヤ!すげぇ!さすが小十郎!!」
手を叩かんばかりの成実を冷たく横目にし、部屋を後にした。



――――ぐったりと身体を預ける彼の重みは、本当に心地よかった。


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