モノオキ

□任務:足止め*
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奥州・米沢城


今回の目的は軍神ではなく、竜なのだ。
佐助は、竜がいる離れへと忍び込んだ。
気配を極力消して、離れの天井へ潜り込む。
天井から覗き込めば、城の主――。伊達政宗が一人、酒を片手に地図を見ていた。

佐助が使わされた任務。

《竜の足止め》だった。

前回、対足利戦の時に乱入されて、それは大乱戦となった。
今回川中島の戦には乱入されて貰っては―――、
『雌雄を決する戦に水を差されたくない。』
と、甲斐の虎は言った。

きっと竜は幸村と決着を討つために、動くだろう。
しかし、この戦には。

『…悪いけどお呼びでないのよ』
佐助は、懐から薬包紙を取り出すと、竹筒に入れてある水と混ぜる。
天板をずらし、糸を伝わせて薬を盃に垂らした。

命を奪うものではない。
吐き下しが起こるだけだ。
『二、三日じっとしててくれればいいからね〜』
無味無臭の液体は、盃の中へと溶け込んでいく。
後は、政宗が飲んで症状を確認すれば任務は完了だ。
伊達も忍を抱えてるから、解毒薬を作ってしまうだろうが、そうなったら、時はすでに遅し。
戦は終わってる事だろう。
佐助は息を潜めて、政宗が盃に口をする時を待った。
どれぐらいこうしていただろうか。
限界まで気配を消しているのも楽じゃない。

しかし、竜はどんな気配でも察して――
喰らってしまう。

つい。と、盃に政宗の手が伸びた。
一口飲んでもらえば、しめたものだ。バレる事はきっと無いと思うが……。

『せめて、その盃は飲み干してよ…』
佐助の額に汗が滲んだ。
ゆっくりと。
ゆっくりと、政宗が盃を煽る仕草が見て取れた。
佐助の位置からでは、本当に飲んだのか確認は出来なかった。
『本当に…飲んだ?う〜ん?そんなに速効性は無いと思うけど…。』

佐助は、一か八かの賭けに出ることにした。


佐助は張り詰めていた糸の様な気配を解いた。
――――瞬間。
自分の横ッ面を掠め、火箸が飛んできた。

頬から血が、滲んだ。


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