モノオキ

□蒼天月/紅日天
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真夜中に
眩しくて
目が覚めた。

気怠い様に
まとわりつく眠気も、
夏の暑さも無かった

ただ、蒼く
透明な空間が広がっていた。


ぼんやりとして、蒼く、
そして、ひどく明るい。

―――月明かり。



何故と思うよりも、これは、月明かりのせいなのだと容易に知れた。


部屋の灯りは一つもついてはいないのに。
部屋の隅々はまだ暗々と、闇を携えているのに。


見上げた天井は仄暗い蒼の様な、うっすらと光を放っていた。



まるで、水中で目を開けた様な。
穏やかで、暗い、青。
目を閉じれば、幾線の光がまぶたの裏を撫でる。



――ああ、やはり。



『――これは、月だ』

身体を起こし、
障子を開ける。
空中には、下弦の月。


蒼い。
青い。
眩しい光が
自分を照らした。


無機質な光は、
太陽光の反射。


冷たくも、柔らかな光。
月とは何故こんなにも、人を魅き付けるのだろうか。

まるで

そう、まるで。


彼の人の様に。



心を支配して、止まない。

――奥州筆頭 伊達政宗



彼の人も蒼を纏っていた。目の醒めるような
―――――――――蒼。



月の様な冷たい隻眼。
しかし、振るう剣は
猛々しい。


自分とは、対照的な
けれども、何処か
似ている。

戦場で出会った時、ただ
一心不乱に刄を交えた。



《心地好い》
《今がずっと続けば》


などと、不埒にも思ってしまった自分がいた。



自分に降り掛かる、温度の無い光をこの身にいっぱい受けながら。


幸村はもう一度、蒼空に架かる月を見上げた。



――独眼竜 伊達 政宗


「あの御人も
月の様な方だ」


自分を魅了してやまない。

幸村はそう呟いた。





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