バサラタウン

□バサラタウンB
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戦国町のバサラタウンにはタンチョウ鶴の夫婦も裸足で逃げ出すくらいの、ラブラブ夫婦がいる。

旦那様は幸村と云い、奥様は政宗と云う。二人とも男同士だが、そんな事は微塵も感じさせないラブラブ夫婦であり、特に奥様の政宗は商店街の男連中から、事在る毎に(貞操を)狙われていた。

そんな奥様に惑わされた男が此処にも一人。


「これが動物たちとの絆だ!」
「うるせぇぞ、店主。犬が吠えてんじゃねえか」
「おお!これはすまなかったな!」
豪快に笑いながらも足元を大型犬に吠えられているのは、バサラタウンにある『もふもふカフェ』の店主・徳川家康である。
ちなみに政宗の腕に抱かれている猫は、ヤマアラシの如く毛を逆立てて家康を威嚇している。

家康は、二週間前にこの町内に新装開店したばかりのペットショップ兼犬猫触れ合いカフェ『もふもふカフェ』の店長で、事ある毎に「絆だ!」と言うのが口癖で、常に『絆カウンター』が発動している。
開店当初から、ふらりとやってきて猫や犬と戯れる政宗の姿は、家康の目には天使か天女がぬいぐるみと戯れているように見えた(らしい)


「ハハハ!すまんな、政宗。ほら注文の抹茶のパンに木苺掛けたヤツ」
満面の笑顔を政宗に向けて、注文された品を運んでいけば。
「『抹茶シフォンの木苺ソース添え』だろ。自分とこのmenuぐらい覚えろよ」
と、呆れた顔で笑われた。政宗の笑顔が見たくて、いつもはスラスラと言っているメニューをワザと間違える。
こんな茶目っけぐらい、政宗と儂を繋ぐ絆の為なら許してくれるよな!忠勝!(注・犬の名前)

「儂が付けた訳ではないからな。長い名前で辟易しとるよ」
これまたワザとらしく肩を竦めてみせる。む、儂って結構演技上手いぞ!
「ハハッ、アンタらしいぜ」
腕に抱いていた猫を床に下ろし、政宗はフォークを手にしてケーキを口に運び始めた。
その姿を向かいの椅子に(勝手に)座り、眺める。
赤いジャムが政宗の唇を彩る姿は妖艶を通り越して、卑猥に近い。

(政宗、可愛いな。…いやホントに可愛い。可愛すぎてそのまま食べてしまいたい)

「オイ、何ジロジロ見てんだ。食いづれーだろ」
政宗に言われて気付けば、食い入るようにガン見していた。
「オ…おお。すまんすまん!確かに食べづらいな」
そう言いつつもチラチラと横目で政宗を盗み見てしまう。
うむむ…いかんいかん。コレではまた叱られてしまうな。いや儂としてはそーいうのも有りではあるが……。
イヤイヤ!政宗の前では好青年を演じておるのだ。
余り変な行動をして、二度と店に来なくなって貰っては一大事だ。

「しかしなんだ。政宗は動物が随分好きなんだな!」結局、話題を変えることにした。
「好きって云うか…フツーだぜ。でも犬は好きだな。なつっこいし」
そう言って政宗は自分の足元に居たハスキーの頭をワシワシ撫でた。
「アンタも大型犬っぽいよな。忠犬っつうの?」
そう言って、政宗が笑い掛けてきた。
……これはもしや、わわわわわわわわ儂の事を好きだと!??
ハッ!これはきっと動物たちが取り持ってくれた儂と政宗との愛の絆だ!
有り難う、忠勝!(注・ハスキー)

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