頂物・捧物

□Drastic Treatment
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「いっ、いやでござる!某絶対行かないでござる!!」
「ちょ、旦那!高校生にもなって何我が儘言ってんのさ!」
「あそこに行くと戻ってこれなくなると、元親殿から聞いたのだ!」
「嘘に決まってるでしょ、そんなの!たかだか保健室に行くくらいで泣かないの!!」



(相互記念文)
『Drastic Treatment』




「今日もいーい天気だなァ…。」


春特有の暖かな陽射しの下、窓辺に寄り掛かり、煙草を咥え、黒い衣服の上に白衣を纏った男が呟く。
この男、こんな成りをしていても、まごうことなき学園の保健医、名は伊達政宗である。

「さって…、昼寝でもすっかなあ…。」

短くなった煙草を携帯灰皿に押しつけると、大きく伸びをしてから、備え付けのソファに腰掛ける。

「ったく、堅ぇソファ…経費ケチりやがって。あのハゲネズミ…猿、ゴリラ。」

ぶつぶつと文句を言いつつ欠伸をしたところで閉めきっていた扉が勢いよく開き、政宗はその勢いの良さに驚き飛び上がる。

「うぉっ!?」
「旦那っ!ほらっ、自分で歩いて!!」
「うっ、うっ…佐助は某を見捨てるのか!」


現れたのは二人の生徒。橙色の髪をしたちゃらついた男子生徒に、茶髪の背の高い生徒が引きずられる様にしていた。

「Hey!ガキ共、ノックぐらいしやがれ!ついでにびーびー泣いてんな、今はいねえから良いけど、病人が寝てる場合だってあんだぞ。」

相手が生徒だと確認すれば、ソファから立ち上がり、真っ当らしい言葉を吐く。

「うぅ…、申し訳ないでござる。佐助、やはり教室に…。」

情けない声を上げる生徒に保健医は眉をひそめる。すると佐助と呼ばれた生徒が保健医の方へと、べそをかいた生徒を突き出して。

「先生、病人!この人、一年の真田幸村ね。熱あるっぽいから。」
「さっ、佐助ぇえ!」
「Ah〜?熱だぁ?こんなに騒いでりゃ平気だろーが。」
「それがさあ。昼ご飯だって残したし、すごい額が熱いんだよね。ぼーっとしてるしさ。とりあえず看てやってよ、伊達センセ。本業さぼって煙草吸ってたって片倉センセに言っちゃうよ?」

飄々と言う佐助の足に幸村と呼ばれた少年が縋りつく。

(匂いが残ってやがったか。)

片倉という口うるさい同僚への密告を避けたい政宗はチッと小さく舌打ちをすると、ゆっくりと幸村に近付き、しゃがみこみ目線を合わせる。

「Ah〜…真田幸村だったか?」
「はっ、はいでござる…。」
「とりあえず診てやるから、あっちのソファに座れ。…んで、お前は教室戻んな、そろそろ昼休み終わるだろ。」

返事だけで一向にこちらを向かない幸村の腕を掴むと、政宗は佐助に向かって早く行くよう促す。

「はぁい。じゃまた後で様子見に来るから、旦那。伊達センセの言うことよく聞くんだよ。」

子供をあやすよう優しく告げるなり、佐助はさっさと保健室を出て行ってしまった。
取り残された幸村はぐったりとした様子で、とぼとぼとソファへ向かい腰掛けた。

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