頂物・捧物

□Call my nane!
1ページ/2ページ

眼下に広がる雪原の色は、薄桃色。
浅く、早く継がれる吐息にまでじくじくとした熱が染み、融け、闇に流れ落ちていく。

紺碧の着物も、その下の単も、右目の瑕を覆う眼帯さえも剥ぎ取った。
薄く水の幕が張る左目を庇おうとする左手を縫い止め、漏れ出る嬌声を塞ごうとする右手を押さえつける。

それでもなお、唇を引き結んで声を抑えようとする姿がいじらしくて、もっと側に寄りたくて。
ぐ、と下肢を寄せれば、奥を穿たれた身体は弓形に反り、月色の喉が息を詰めるのが見えた。
愛おしさが欲望に直結し、ずくり、と質量を増して狭い内壁を押し広げる。
「…Shit……っ、テメエ、まだ………あっ!」
風に揺れる柳のようにしなやかな腰を引き寄せれば、良いところを責め苛まれた体は口先などより余程素直に震え主の声を奪う。

我が身の下、鎧うもの全てを奪われ、身体どころか呼吸の一つさえ成すがまま。
陽光の元、一国を率いる若き主。
血濡れた大地の上を、雄々しく翔ける青き竜。
そのどちらもであるはずの者が、そのどちらででもない表情で乱れている。
けれど、特別であることの優越感だとか支配欲だとか、どうでもよかった。
今、したいことをするだけ。
幸村はしっとりと汗ばむ背を掌で支え、組み敷いていた政宗の上体を起こさせた。
朱色の耳朶に吸い付くように囁く。
「まさむねどの……」
潤んだ隻眼が見返してきて、視線がかち合う。
「真田、幸村……」

The World。 一瞬時間が止まった。


.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ