頂物・捧物

□水面、太陽、ガジュマルの下(相互記念)
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「うぉおおーッッvV海でござるーッッvV」
「………」
「さぁ政宗殿!早く泳ぎましょうぞ! …?政宗殿?」
「Ah〜…泳いでこいよ、俺はここで見てるわ」
「ΣΣ何故っ;;」


『水面、太陽、ガジュマルの下』


チリチリと万物を焦がすように照りつける太陽
綿に似た入道雲と、相反する青空の景色が清々しい。
その下いっぱいに広がる海が、白波と共に音を立てていた。

夏と言えば海、海と言えば夏… 夜空を彩る花火とはまた違った風物に、魅入られる者もいる。
そんな海岸近くで、風物も情緒もぶち壊すような叫び声が響き渡った。

「いぃやぁだぁああああーーーー!!!!!!!」
「な、何ででござるか!?遥々奥州より甲斐に来られ、更に甲斐より馬を走らせて来られたと言うのに!?海に来て海に入らぬとは、どういう事でござるか!?」
「Shut up!入らねぇって言ったら入らねぇ!嫌だって言ったら嫌だ!」
「某とて、嫌でござる!!」
水浴び用の簡素な着物を纏った幸村は、同じく水浴び用の着物を纏った政宗に詰め寄った。
しかし、詰め寄る分政宗は後退してしまう。
手を伸ばしても届かない距離は、一向に縮まらない。
睨み合う間にも、容赦なく照りつける太陽。
太陽光を反射する砂浜も熱を孕み、草履越しにも足の裏を火傷しそうな程暑い。
だらだらと汗を流す幸村と同じく、政宗も頬を次々と流れる汗を拭った。
「政宗殿も暑かろう!折角水浴びの着物を着たのだし、しかも目の前には海!!かような涼しげな海を目の前に、入らぬ馬鹿はおりませぬ!」
「馬鹿で結構だ!大体、海に来たいと言った覚えはねぇッ!!」

そう、政宗と幸村は海に来たい訳ではなかった。
甲斐の城で暑い暑いと唸る二人に、水浴びを提案したのは佐助。二人はその提案を良しとして、武田軍が修行に使う滝まで、嬉々として馬を走らせたのだ。
しかし、方向を間違えた二人が行き着いたのは、今目の前にある広大な海だった。
滝とは違えど水浴びに変わりはなく、数年ぶりの海水浴と幸村は大いに喜んだ。
だが、何故か政宗の機嫌は急降下し、海水浴を拒んだのだ。
政宗と入らなければ無意味だと主張する幸村と、何があっても嫌だと主張する政宗の、海に入る入らないの攻防戦が始まった。


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