隣人

□隣人〜Prologue7〜
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「そんじゃ…」と、慶次が読み上げようとした時だった。
「おう!おまえら、此処におったのか」
「しゃ、社長!!」
いきなり現われた社長である信玄の登場に、三人は慌てて求人票を隠した。
「何だ?何を隠した?」
「インや、別に。何でもねっすよ」
『な?』と、慶次が笑いながら幸村の肩を組むと、幸村も首が取れるのではないかと思う程、首を縦に振った。
信玄を尊敬する自分にとって嘘を吐くのはしのびないが、話が話だけに言い出せるワケもなく。
幸村は、俯くだけだった。
信玄は「ふぅむ」と納得がいかないように首を傾げたが、若さ故の…と思い諦めた。
「まぁ、良いわ。それより元親。オヌシ、明日から夜勤に入れるか?」
「…へ?夜勤…っスか?」
元親はあんぐり口を開けたまま、信玄を見つめた。
「うむ。実は島津の所が人手が足りなくてな」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!社長!それとオレ、何の関係があんだよ」
元親が慌てて、信玄の言葉を遮った。
「話は最後まで聞けぇぇい!先程も言うたがな。島津の所が人手が足りぬと、夜だけでもいいから何とかならんかと、助っ人の要望が来てな。そこで、時間的に自由になるのはお前しかおらん―、と言うわけじゃ」
「マジっすかァ!?」
『イヤ、そうだけどさぁ』と元親はぶつぶつ文句を言い始めた。
長曾我部元親―、普段午前勤務で入っている彼は昼には居なくなる。忙しい時にはフルタイムで居たりもするが。基本的に元親のポジションは《正社員》ではなく《バイト》に近い。
「ちゃんと賄いも出るし、日当で支給されるぞ」
その言葉に、幸村が跳ねる様に顔を上げた。
「…〜でもなぁ」
「お、お館様ァ!!その仕事!自分が行きます!!」
幸村は隣に居た慶次の鼓膜を破らんばかりにでかい声で信玄に言うと、信玄は眉をひそめ。
「…幸村、いくらお前が体力有り余る若者とはいえ、朝から次の早朝まで働くのは感心せんぞ」
「大丈夫です!オレ、気合いで何とかしますから!」
「そうか!慢心するでないぞ!」
「ハイ!!」
「…気合いで何とかなるもんなんか」
元親が呆れた顔で言った。
まぁ、何にせよ自分が行かなきゃイイや、と思っていたから。


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