隣人

□隣人〜Prologue7〜
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ワープロ文字でギチギチに埋まった紙面を慶次はざっと斜め読みしてみる。
思ったよりも、求人の数は多かった。
職種はちょっと限られるかもしれないが、これなら幸村でも勤まるところは何処かしら有りそうだ。
「何だ、結構あるんだなぁ。手伝ってやろうか、探すの」
「消去方で良きゃ良いんだよ、こんなん。メンドくせぇだろ。」
元親もどっかりと幸村の前に腰を下ろし、話に交じる。
「大体、幸村正社員なんだからさ。《何処が良い》よりも《コレなら出来る》の方が重要だろ?」
「あー、確かに。たまにゃイイ事言うね、元親」
「たまにってなんだ!」
食い掛かろうする元親を軽く慶次はスルーして。
「じゃ、上から読むよ。幸村」
「ハイ!」
神妙な顔で幸村が返事をする。何時の間にやら姿勢も正座になっていた。

「『浅井経理事務所、男、二十代、職種・経理。要普免。簿記二級、パソコン経験者』」
慶次が読み上げるなり、幸村が苦々しげに眉を寄せた。
「普通免許しかないんスけど…オレ…」
「うん、聞いたオレも悪かったと思ってる。じゃ、次な。『コンパニオンクラブ・蝶 男、二十代、職業はコンパニオンの送迎』可愛い子ちゃんのアシなんてどーよ?」
「バッカ、幸村に出来るワケねーだろうが」
元親があっさりと幸村の心を代弁するが如く却下した。
それもそうだな、と言って慶次は赤ペンでバツ印を付ける。
「次『ソープランド泡姫 男、二十代』…職種は…特に書いてない」
「オイオイ…男に何さす気だ…」
「ポン引きとかビラ巻きとかじゃないか?」
「まぁ、どっちにしろ幸村には風俗の道はまだ早ぇなぁ」
元親が当の幸村を見れば、茹でたカニかタコの様に真っ赤になっていた。
「おもしれーヤツ」
「イジメんなって…。ま、コレもバツ、と」


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