隣人

□フレグランス・キス(フリリク)
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流し台を背にしながら、幸村と政宗は口付ける。
実際のところ、幸村が政宗を抱き締めて離さないのだが。
「っふ…ゆ…幸村、」
がむしゃらに口付けられて、政宗は呼吸を乱す。

初めて体を重ねてからその後、片手で数える程しかシテいない。好き合っていても男同士、中々そういった雰囲気にはなりにくかったのが原因でもあった。
しかし今回こういった風な、衝動発作で体を求めるのは幸村も政宗も初めてだった。
「んっ…ふっ」
熱情に赴くまま舌を絡め取られれば、二人の口端からどちらのものか分からない唾液が伝う。
「―んっ!…っは、ゆき!」
息苦しくなった政宗が抗議の声を上げれば、絡め取られていた舌が解放される。
代わりに、唇の縁を舌で何度も何度もなぜられる。
時折、甘噛みするように唇に歯を立てられれば、政宗の体がびくりと揺れた。

『…ッ、の!』
ベッドの中では受け身に回る政宗だが、前戯や愛撫の時までオトナシクは無かった。何故なら、政宗は海よりも深く山よりも高いプライドの持ち主だからだ。

「ッ―!」
突然差し込まれた舌に、幸村は息を飲んだ。
舌先をくすぐるようにして弄び、絡め取る。
少なからず、恋愛経験では政宗の方に分があった。
口付けの仕方だって、幸村は政宗の仕方を反芻しているだけで。
「っ…む…政宗、さ」
顔の角度を幾度となく変え、舌先だけの口付けで政宗は幸村を追い詰めて往く。
薄目で幸村の顔を見遣れば、主導権は完璧に政宗へと移っていた。



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