隣人

□フレグランス・キス(フリリク)
3ページ/7ページ

……………
しばらくしたら幸村が風呂から上がってきた。
「何だか良い匂いがしますね」
鍋を掻き混ぜてる政宗の横に幸村が立つ。
「Hotto sanguria。白ワインにgrapefruitとcinnamon加えたヤツだ」
耐熱用のグラスに注げば、微かに黄味掛かった液体が良い香りを漂わせて揺れた。
「ホラ。熱いぜ、気を付けろ」
「頂きます」
グラスに口を付けると、幸村はすぐさま笑顔で「ウマイ!」と言う。
「そーか」
政宗も口に笑みを浮かべて、テーブルに残したカップを手にし口へと運んだ。
「コレ、本当うまいです。グレープフルーツと…ミント、ですか?」
「ちげーよ、cinnamon。Mintなんて入れてねぇ」
政宗が言うと、幸村は首を傾げた。
「でも、ミントみたいな匂いしますよ?」
グラスに鼻を近付けて、幸村は匂いを嗅いでいるが。
「な、ワケねーって…」
貸してみ?と、政宗は幸村からグラスを取り匂いを嗅ぐ。
けれど、幸村が云うようなミントの匂いなんてしない。柑橘の匂いだ。
「―…おい、そんな匂い…うわっ!」
横を向いた瞬間、幸村とぶつかりそうになり政宗は驚いた。
何時の間にこんな近くに居たのか。
「て…テメー!びっくりさせんな!」
怒る政宗を余所に、幸村は近づいてくる。
「な、なんだよ!」
「ミントの匂い」
「ハァ!?」
「政宗さんから、します」
すん、と鼻を鳴らし幸村は政宗の髪に顔を寄せた。
「そりゃオメー、Shampooだよ。間違ってオメーの…おわっ!」
言い終わる前に政宗は抱き締められた。
抱きつかれた拍子に、グラスの中身が零れた。「あぶねぇな!」と叱ろうとすれば、幸村はひどく興奮したように云う。
「どうしよう、政宗さん…オレ、変態なのかも…。政宗さんが、オレと同じシャンプーってだけで」
「…お、オイ!」
耳に熱く舌を差し込まれて政宗は体を捩る。
「興奮する…っ」
言い終えたと同時に、深く口付けられた。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ