萌尽きた物

□どうして*(十万御礼黒小政)
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先程まで政宗は幸村といた。
正しく云えば、《幸村の腕の中に居た》だ。
武田と同盟を組んでからと謂うもの、真田幸村は大事小事有る無しに関わらずやってくるようになった。
そんな幸村を見て政宗は思い始める。
『コイツぁもしかしたら、オレに気があるんじゃないのか』と。
政宗自身に衆道の毛は無い。大体、好んで男と寝たいとも思わない。

それだけど。

誘いを掛けてみれば、アッサリと。
それは砂上の城のように、アッサリと幸村は政宗の手に落ちた。
その上、噛み付く様な口付けに、凌辱にも似た愛撫。
まるで戦。命の遣り取りをしている錯覚すら覚えてしまう。
己が組み敷かれているのに、なんてヨイのだろう。


男同士の、真田幸村との交接はとても良い事を政宗は知った。
『これなら抱かれるのもワルクネエ』と。
きっとそれは真田幸村だからだと。
それから政宗は、幸村とカンケイ持つようになった。

そして、コトは起こった。
一仕切り幸村と交じり合った政宗は、体中に奔る痛みを圧しながら身仕度を整える。
「何処、へ」
寝呆けた様な、未だ朦様とした声で幸村は政宗に問うてくる。
「…部屋ァ帰んだよ。いくらオレでも客人の部屋から朝帰りっつーのは、見場が悪ィ」
「むぅ…。分かってはいるが…寂しいな」
眉を下げながら幸村が、嬉しい事を言ってくれる。
『また明日な』と幸村に言い置いて、政宗は部屋を後にする。


草木も眠る闇緑の刻。
例え己の城でも、私室から遠く離れたこの廊下を人に見られれば、些か面倒である。

『小十郎に見つかるとウルセェし…』

何かと煩い右目の顔を思い、廊下を曲がった所で政宗の記憶は途切れた。

そして気が付けば、この有様だ。
四肢の自由を失った状態で、政宗は湯殿に居たのだ。

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