翔女PRESS

□二次創作のための45のお題
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『39 水着』
背景:翔皇女子プロレスのエピソード。


 七月の翔女興行は九州シリーズ。最終戦の沖縄興行はシークレット対戦が売りの目玉となっている。
 事の発端は二年目の七月九州シリーズ直前の道場で起きたある事件――最終戦・沖縄興行ついでに翔女慰安旅行(三泊四日)へ突入する。その期間中『翔女代表・神名僚斗と一緒に過ごすのは誰だ?!権』を巡り真田と草薙が口論、それを聞き捨てならないと他の選手たちにも飛び火。険悪ムード――仲裁に入った代表秘書・高千穂 聖が名案とばかりに思いついたこと。それは興行としても面白そうな魅力的なこと。

「試合前に籤引きをして挑戦者を選定。選ばれた挑戦者は自分が対戦したい相手を指名して決める。残った選手も最初の組み合わせ同様に籤引きで試合を決めましょう。それと、これは不正が起こらぬよう沖縄のリングで行ないます。反論や異議は認めません。最終の沖縄戦はシークレット興行とします」

 得意げな聖は唖然とする選手たちにご褒美を投下した。

「尚、この試合での勝者には翔女代表・神名僚斗との四時間デート権を贈呈します。正確には午前・午後権よ。夜は僚斗の自由にしてやってよね」

 そう。それが夏のお祭りの実態だ。


 今年は五年目、例のお祭りも四回目。選手たちも増えたため、沖縄デートに限らず普通にデート権をもらえるようにも改訂された。もちろん、聖と選手たちだけの秘密会合の決定によって。
 この夏のイベントが近づくと皆の目の色が変わる。バカンスよりも気合いが入っているといっても過言ではないだろう。ハーレムの主人的な僚斗はといえば、当初の嬉しさよりは気疲れの方が目立つようになるのだが。
 そんなこんなで運命の一戦は近づいてくる。


「真琴、水着を買いにいきませんか?」

 タッグパートナーとなった杉浦美月がオフにも朝練を欠かさない近藤真琴に声をかける。美月の後ろからはノエル白石が顔を覗かせている。

「あ、ボクも行きます」
「ああ、和希さんもいたんですか?」

 美月が真琴のパートナーになる前から相羽和希は真琴の練習に便乗していた。同期の武藤めぐみ、そして新女の結城千種の存在が和希の頑張りの原動力となり“やりすぎ翔女隊”のメンバーらしい無茶をやりかねない。そんな和希をみてやることで真琴の無茶も抑制できていた。

「ひ、ひどいよ、美月ちゃん……」
「……和希……一緒にいく……」

 よよよと泣き崩れる和希の背中をノエルがポンポンと優しく叩く。「ノエルちゃん、ありがと」と友情の抱擁。

「水着か……」

 真琴は和希とノエルのいつもの寸劇を横目に考えを巡らせる。

「たしかにくたびれてきてはいるな……」
「行きますか?」
「うん。行こう」
「そうと決まれば!」
「……着替えて……おでかけ……」
「ですね」
「そうしよう!」

 翔女のCBTとマコはこんな仲の良い娘たち。


 翔女選手がひいきにしているブティックに四人はいた。新作水着を前にあれこれ試行錯誤なCBTの三人とは別に顔を真っ赤にし狼狽えているマコの姿。

「……こっちの水着か!? あたしはてっきりリンコスとばかり……」

 勘違い。そういえば新人時代にも同じような間違いをしたことがあったと思い出す。

「真琴、どうしました?」
「……い、いや……」

 自分の近くにあるマネキンに飾られた水着に目をやりながら美月に応える。

「どんなのがいいかな? あたしはこういうトコあんまりこないからさ……」
「そうですね。真琴はこういうのも似合うと思いますよ」

 なんとかはぐらかせたようだ。ホッと一息。

「マコさんなら、このワンピースなんかいいかも」
「……イメチェンになる……新鮮……悩殺です」

 ちょいハイレグの大人っぽいデザインのワンピースを勧める和希とノエル。意外と美月も頷いていたり。

「……そうかな」

 なんだかんだと押し切られちゃうのがマコちゃんである。あれよあれよとその水着を持って試着室へ。

「どうですか?」
「……あー……うん。……いや、ちょっと……」

 美月の問い掛けにすごく恥ずかしそうな真琴の声。カーテンの隙間から顔だけだして可愛らしい。

「……ふふふ……よいではないか、よいではないか……」

 ノエルがカーテンを引いて真琴の水着は公開。

「格好いいです! マコさん!」
「似合ってますよ」
「……本当?」

 おずおずと三人へ視線を向ける。だが、真琴の視界には自分を注視する他の翔女メンバーが入ってきた。

「……鼻血たらり……」
「……真琴ちゃん……大胆……あぅ」
「……やるわね」
「うふふ。今年の真琴は攻め攻めなのね。龍子もボヤボヤしてられないわよー」
「涼美の水着の方が大胆だったろ」
「じゃあ、私はこれにしようかなぁ」
「負けないッスよ。あたしはこれでいくッス」
「……では、私も冒険してみましょうか」
「バ、バカバカしい!」
「そう言う早苗ちゃんも染まった……これも運命」
「和希、行くときは誘ってって言ったよね?」
「そそりますわ」
「マコっち、やるー!」

 ノエルの言葉尻に乗っかって――遥、利美、涼美、龍子、ひかる、美幸、みこと、早苗、紫月、めぐみ、明日香、真鍋――次々に発言。

「き、き、きゃああぁぁぁぁーーっ!!!」

 嗚呼、マコちゃん哀れ。

「さすが、真琴。間違いなく、いじられキャラとしては和希と共に翔女のツートップです」


 そして、九州シリーズが始まり、沖縄シークレット戦に勝利した真琴が新しい水着を披露したかどうかは二人の秘密だ。


「……秘密? ……ふーん……」



後記:
翔女の愛すべきキャラ・マコちゃんが主役です。基本的にはCBTの三人と真琴がセットで描写されます。
SS書くなら五年目を主軸にすると楽しいですね。

《2007/10/25》
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