翔女PRESS

□二次創作のための45のお題
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『06 パートナー』
背景:翔皇女子プロレスのエピソード。


 今年も暑い夏をさらに熱気に包む翔皇女子とJWP(ジャスティス・ウィン・プロレスリング)が激突するタッグリーグが始まろうとしている。
 まず八月に翔女の《舞乙女タッグリーグ》、翌九月にJWPの《決めろ!友情の合体技を!タッグリーグ》が連続する。このタッグリーグは再興団体の翔女と新興団体であったJWPが女子プロレス界を生き残るために手を組み共闘を続けている証の一つだ。リーグに参加する選手は自団体に限らす提携団体と共闘契約にあるそれぞれの団体から派遣された選手を交えて行なわれるもの。ファンだけでなくプロレス関係者にも注目の大会なのだ。


「……ふっ……ふっ……ふっ……ふっ……」

 黙々と筋トレに没頭する選手が一人。道場にすでに人影はなく静けさの中に彼女の存在が強く残る。
 道場の入り口の引き戸が開かれ誰かが入ってきた。が、彼女はそれに気付かずにただ黙々と動く。

「そろそろ休めよ、真琴」
「……僚斗さん」

 翔女代表の神名僚斗が「もう戸締まりするからな」と付け加えながら近藤真琴のトレーニングマシーンに近づいた。

「……まだです」
「ダメだ! コーチとしてはこれ以上は認めない」
「……でも」
「ダメだ! ただでさえ、うちの連中は止めるまで練習しちまうバカばっかだろうが! おまえを見逃せばバカ総大将のお龍まで練習始めちまう」

 翔女のトップイベンターであり選手たちのリーダー格サンダー龍子は現在負傷療養中。寝た子を起こす真似は避けたいのが団体代表の立場の本音だ。
 愚図る真琴を道場から追い出して「ストレッチ付き合うからちょっと待ってろよ」と戸締まりを済ませてく。そして……。


「なあ……真琴」
「…………」
「おまえのパートナーを変えるぞ」
「…………」
「まあ、正確にはおまえを含め――なんだけどな」

 話を聞きながら真琴は頷く。そろそろかなと思っていたから。
 現在のパートナーは先輩の石川涼美。ワールド女子に在籍中はサンダー龍子の名参謀であった。翔女では戦力の均衡を考え、龍子は小川ひかると組み、涼美が真琴と組まされていた。
 団体も五年目を迎え、多くの選手を抱えるに至ってチームリセットをかけるつもりなのだろう。

「誰なんです。アタシのパートナーは?」
「杉浦美月。不服か?」
「いいえ。決まったからには全力を尽くすだけです」
「……二人で、だぞ」
「わかっています」


 翌日の道場にて。
 僚斗の口から来月の舞乙女からの新タッグチームが発表されてゆく。鉄板タッグである龍子&小川組と真田&草薙組の2チームが変わらなかった。翔女最凶と恐れられ始めた南&伊達組は、南&鏡組と伊達&JWP組と分かれた。氷室&葛城組、相羽&ノエル組、武藤&石川組……そして、近藤&杉浦組。このチームで次にリセットされるまで闘うのだ。


「よろしくお願いします、近藤先輩」
「……そうじゃない」
「は?」
「真琴、だ。アタシも美月と呼ぶ」
「…………はい」
「二人で勝ちにいく!」
「ふふ。わくわくしてきましたよ、真琴」
「アタシもさ……美月」


 翔女に新たな風が吹く。小さなつむじ風はやがて大きな竜巻になりトップを覆い隠すが如く成長する。
 数年後『まこみつ』と称し愛される名物タッグは産声をあげた。



後記:
なんか軍団戦仕様で発表したものを再び戻すのも小説書きとしては申し訳ないと思い、まこみつ結成のお話を書き起こしてみました。
N様、紛らわしい事をしまして、本当に申し訳ありませんでした。

《2007/10/16》
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