翔女PRESS

□愛と友情と勇気のお題目
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11:おとす
背景:愛の軍団交流戦、VS愛・戦士戦。アウェーでのエピソード。


「うきゅ〜ぅ、しょんぼりなの〜」

 翔皇女子控え室では試合を終えて戻ってきたソニックキャットが残念そうにうなだれている。いつもならすぐに気持ちを切り替えるソニだが、今回ばかりは様子が違うようだ。

「ミカさん、元気を出してくだサイ」
「ソニ先輩、負けを悔やむというのなら私たちも同じです」
「でも、次に負けなければいい。そうでしょう、ソニさん!」

 今回の軍団対抗戦に臨んだディアナとまこみつコンビが声をかけるが、当のソニは「うきゅぅ……」と不満そうだ。

「みんなは」唐突に口を開くソニ。「頑張っていい試合してたにゃ。ソニは……ソニは……」

 試合内容を思い出して地団駄を踏み声にならない叫びをあげジタバタし出す。よほど納得できていないのだろう。

「メインのわりに地味!でしたから」
「……ああ。軍団エースの試合とは思えないな」
「でも……あれは互いに打つ手がなかったっていうか……えと」

 辛辣にズバリと指摘する龍子とパットの物言いに和希があたふたしながらフォローする。

「……スリーパー……馬鹿一代……」

 ソニが闘った大将戦を簡潔にわかりやすい一言で表わし心的にトドメを指すなぎさ。慰め用の風船に息を吹き込み始めている。


 この日、翔女に挑んできたのは《愛・戦士》。公式戦の同じリーグで闘ったこともある軍団だ。先鋒のユン・メイファ、タッグに相羽和希&金森麗子、大将は越後しのぶの布陣。いずれも可愛い顔して真に実力ある強敵である。
 結果だけみるなら《愛・戦士》の完全勝利で翔女は負けた。先鋒を闘ったディアナもタッグを闘ったまこみつも次に気持ちを繋げている。――ここで大将戦を振り返ってみよう。いったい何がソニを不燃焼させてしまったのかを。



「両者睨み合いが続いております。……あぁーっと、動いた。越後、ソニックに組みつき背後をとったぁぁぁーっ。そして、素早くスリーパーーっっ! ソニック振りほどく。しかし、越後組みつく。またもやスリーパー! 締め落とし地獄へ一直線だぁぁーっ!!」

 リング中央で繰り広げられた執拗なるスリーパー。たかがスリーパー。されどスリーパー。ソニの体力を確実に奪っていった。
 観客はあまりに地味すぎる攻防に呆れ「越後ォ、尻出せぇー!」とか「ソニ、真面目にやれぇぇー!」とか野次をとばす始末。

「静かな攻防に観客も焦れてきました。解説の六角さん、どうでしょう?」
「まあ、地味っていえば地味だけど、互いの拮抗しているからこその攻防ともいえるね。ま、地味だけど。んー、でも越後選手のアレは何げに効いてるね。ソニちゃん、このままズルズルいっちゃうかもよ」
「確かにソニックの動きに余裕がなくなってきたように思いま………あーっと! 越後選手が組みにきたのを待ち受けてぇー、小さな身体にプラズマ現象! 伝家の宝刀プラズマソニックボムだあぁぁーーっ!」
「いや……」ダウンした越後の瞳に宿る闘志を見逃さない六角。「……どうかな?」

 ようやく動いた試合に観客たちもヒートアップ。ソニック、越後への声援が飛びかう。
 浅かったのかフォールを奪うまでに至らない。ソニックは越後の起き上がるタイミングを見計らい俊敏な動きでフランケンシュタイナーを仕掛ける。

「越後返した! 返しました! 堪えてパワーボムで叩きつけるぅぅーっ! ソニックキャット、大ピンチだあぁぁーっ!!」

 越後ファンの決めろコール。またもや「尻」や「ピーチ」などの声も聞こえるようだが。ソニックファンの悲痛な声が響き渡る。
 もはやフラフラのソニに越後が組みつく。

「今、日本海に嵐が吹き荒れたぁぁーっ! JOサイクロォォーン! ソニック轟沈だあぁぁーっ!」

 スリーカウント。静かな攻防が一転、怒濤の勢いのまま豪快に決着してしまった。

「……やるねぇ。ソニは荒れるだろうけどね」



 撤収してバスに乗り込んでからもソニは不機嫌のまんま。

「……今度は負けないの。負けないったら負けないにゃぁーっ!」


 この日、ソニは越後しのぶ選手との再戦を誓ったのでした。



後記:
PON様が運営する『レッスルエンジェルス日記帳2』でのVS翔女との対戦記事を観、書いてみました。
アウェーならではの、おもしろ展開に吹きました。

《2007/11/13》
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