ボカロ

□鏡音 レン
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『思い』


スヤスヤと眠るあの子の部屋に静かに忍び込み枕もとに腰掛、見つめる。それが私が仕事から帰ってきてする事だった・・

「今日も可愛いね、レン」

まだ、夜も明けず鳥のさえずりさえも聞こえない時間に私は仕事から帰ってくる

当然そんな時間にこの子が起きているはずがない。まぁ、起きていても困るのだけれども・・

私の仕事はいわゆる愛を売る仕事だ。酒や煙草、キツイ男物や吐き気がするほど甘い香水の匂いを漂わせる私をレンに見せたくなくてわざと遅く帰る。

帰ってくる言葉はなくともこの無垢な寝顔を見ていられるだけで私は幸せで、毎日毎日繰り返す罪な事が許されるような気がした。

「はやくお風呂に入って匂いを落とそう・・」

そう呟くと重たい足取りで立ち上がった時、レンの声が聞こえた。

「マスター」
「!レン、おきて・・」
「すぅ、すぅ・・」
「寝言か・・」

起こしてしまったと焦ったがどうやら違うようだ。

「マスター、寂しいよ」
「・・・」
「マスター・・」
「ごめんね、レン」

きっと悲しい夢をみているのだろう。レンは眉を寄せ苦しそうだった・・

「一人にしてごめん。レン、好きだよ」

そう囁いて小さな手を握る。握ると気のせいかも知れないがレンが少し笑ったような顔がした。



END
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