黒河探偵事務所

□関西弁のアイツ
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 仮眠室のベッドで眠る黒河。
 その周りを囲む玲と佐川、それに神崎。




「なんで窒息するまでダッコするんですか」
「いやぁ、あんま抵抗されると逆に抱き締めたなるんよ」

「オッサン、限度があんだろが……」


 いやぁ悪かった。と、ヘラヘラ笑う神崎に反省の色はない。
 その時、青ざめた顔の黒河が小さく唸り、薄く目を開けた。



「クロさんっ! 大丈夫ですか!?」



 起き上がろうとする黒河をすかさず手伝う玲。



「なんか……クラクラする」

「酸欠……だな」

「そか、そら大変や」



 まさに他人事かのように言う神崎の顔を玲が一睨み。



「おお、怖ー」

「そもそも原因は神崎さんです……」

「悪かった……スマなんだ、な」

「玲ちゃん、もういいから」

「……はい」

「クロ坊、お詫びに後でラーメン奢ったるわ」



 大きい手が黒河の頭を撫で、髪をクシャクシャにする。
 それに答えるかのように、黒河はニッコリ笑った。














「……で? 何でお前等までついてくんねん」

「私は、具合の悪いクロさん看とかなきゃなりませんし」

「俺腹減ったから」

「いやいやいや! お嬢はまだ良しとして、佐川チャンは理由になっとらんやろうが!!」



 ここは狭い路地の建物に挟まれた、小さなラーメン屋。
 場所が場所だからか、客はカウンターに座る神崎と黒河。あと、その隣にちゃっかり座る佐川と玲だけ。

 お詫びに奢る。その理由で、目を醒まして間もない黒河を外へ連れ出した神崎。


 最近この街に来たとは思えない程、神崎は駛街に詳しかった。

 どんどん黒河の知らない路地を抜け、たどり着いたのがこのラーメン屋 『一竜軒』。
 気のよさそうな老亭主が営んでいるようだ。


 こんなヒト気もない所で、どう切り盛りしているのかは知らないが……。




「どうしてここがわかったんや?」

「刑事を甘く見んなよ? 尾行は得意中の得意だ」

「私、クロさんが心配で……」

「……っま、エエわ。ついでやし奢ったろ」

「ヨッシャ!」

「ありがとうございますっ」

「仁さん……すいません」





 昔馴染みの、新しい仲間がまた増えた。
 今度は、優しくて気前のいい自慢の師匠。

 それに。



「あんな、ここのジイちゃんなかなかのキレ者やで」

「え……」

「それはまた今度な」




 まだ、教えてもらうこともありそうだ。







黒河探偵事務所 第五章
関西弁のアイツ

End



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