黒河探偵事務所

□関西弁のアイツ
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「そりゃ……初耳だな」



 今度は、佐川も交えて再び再開したババ抜き。



「そんな風には見えねーが……」



 チラリと神崎を見、首を傾げる。
 失礼なやっちゃ。と苦笑する神崎は、玲からカードを引く。
 どうやらババらしく、目を細め、あれま、と声を漏らした。



「ところで仁さん」

「なんや?」

「事務所を移したって……どこに?」

「いやホンマ、めっちゃ近所やねんで?」



 カードをテーブルに置き、ゆっくり立ち上がる。
 スタスタと窓の方へ向かい、ホレと指差した。

 神崎の差す先は、向かいの小さなビル風の建物。
 丁度、黒河探偵事務所と同じくらいの大きさだ。



「え……え、アレっ!?」

「なー、近いやろ?」

「ち、近すぎです!! む、向かい!?」

「あそこ、前まではジイちゃんがなんや事務所構えとったけどな、土地売りおってん」

「あー確かそんなこと……」

「そこにワシが来たんよ〜」



 よろしゅうなー。と一言言うと、神崎はいきなり黒河に抱きついた。




「っぷ! 仁さん、苦しいっ……!」

「なんや、恥ずかしがんなや〜。可愛えなぁ」



 更にギュウっと抱き締める神崎。
 すると、佐川が玲に近づき耳打ちした。



「……なんか……仲いいな」

「まあ……いつものことですかね……?」

「え、オッサンってコッチ系?」



 頬辺りに手を構え、“オカマ”だとか“ホモ”だとかを表す仕草をする佐川。



「い、いや! ただ、スキンシップが過ぎるだけ……かな。じゃれるのが好きなんです」

「へぇ……」

「すぐに抱きつきますから……」

「お、お前も!?」

「会う度に……でも、すぐにクロさんが助けてくれます」

「ふーん……」



 ふと、黒河の方へ目をやる。
 懸命に抵抗する黒河。
 しかしその抵抗も段々弱まり……



「……玲、アレ」

「動かなく……なりましたね」

「お嬢〜大変やぁ。クロ坊、窒息してもた」
「え!?」



 神崎の腕の中でぐったりする黒河。
 次に黒河を担ぎ、玲の指示に従い仮眠室へと向かった。


 
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