黒河探偵事務所
□セクハラ刑事にご用心
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「協力?」
佐川に向かい、ソファに座る黒河が声を上げた。
「協力……つか、あー、まぁそんな感じ」
「どういう意味だい……?」
「だからな……俺達が捜査しきれねぇような、それもお前の専門科の"推理"を要する事件があるとするだろ?」
「うん」
「簡単に言えば、それこそ"探偵"が居なきゃ解決できねぇ難しい事件だ」
うん、と相槌を打ち、玲のいれた紅茶に口を付ける。
静かに喉を通る茶の香りを嗅ぎながら、佐川の方へ目をやる。
佐川のその表情は真剣そのもので。
学生時代の、あのおちゃらけた佐川の顔ではない。
成長した……というのか、あの頃語った佐川の夢、刑事の顔になっている。
卒業して別れた2人の知らない時間を改めて感じ、少し胸が苦しくなった。
そう1人感傷に浸っていると、眉間に皺を寄せた佐川が声を掛けてきた。
「おい……聞いてんのか」
「あ、ごめん」
「ったく、こちとら真剣なのによ。そういうトコ、変わんねぇな」
佐川はへっと鼻で笑うと、話を続けた。
「だから、その事件の推理をして手助けをする"探偵"。その役目を、お前にしてもらいたい」
「えっ」
「……なんか問題あっか?」
「いや……その。そんな重要な役目、僕には荷が重い……かなって」
そう言い、申し訳無さげに佐川を見ると、佐川が声を上げて笑った。
「大丈夫だ。今までにお前が解決した事件、署にある資料は全て目を通した」
「え……」
「お前なら、大丈夫だ」
「でも……!」
「ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ……うっせぇ!! これ以上なんか言うと、公務執行妨害で逮捕すっぞ!!」
「んな、めちゃくちゃな!! 罪名とかそれ、明らか適当だろう?!」
涙目で訴える。
すると、楽し気に笑った佐川が言った。
「嘘だよ、黒河。やっぱお前をからかうのは面白れぇな」
「えーっ!?」
「当たり前だろが馬鹿!! おめぇ、なんも悪くないのに、ンな適当なんでしょっぴけるか!」
ケラケラ笑う佐川を涙目で見ていると、ふと思い出したかのように佐川が口を開いた。
「そうだ。そのかわり……お前では手に負えない事件や依頼は、俺がサポートしてやる」
「……へぇ」
「それに協力してくれたら、それなりの礼はするつもりだ。どうだ?なかなかイイ話だと俺は思……」
「乗った!!」
佐川の言葉を聞き、すかさず声を上げたのは玲だった……。