黒河探偵事務所

□セクハラ刑事にご用心
4ページ/9ページ



「アンタ、そろそろ落ち着こうぜ」

「なにも抱きつかなくても……」





 あの後、今まで黒河が捕まりそうな心当たりを言い続けた玲。

 はじめは佐川も静止をかけていたが、段々慌てふためく玲が面白く見えてきたようで。
 だから、暫くは笑いながら見ていたのだが……。




『もしかして、公園の前に並んでた自転車を将棋倒しにしちゃったこと!?』



 しまいには立ち上がり、そこらをウロつき始めた。
 それにもう10分は経つ。
そんなに語られちゃ、堪ったもんじゃない。



『おい! 落ち着け!』



 止まらない玲に思わず佐川は立ち上がり、後ろから抱きついた。



『ひ……ッ!』

『止まれってば!!』



 そして、今に至る。



「だからよ、俺はアンタ達を捕まえに来たんじゃねえ。わかる?」

「わかる、わかります……」


 佐川が腕組みをし、玲を見下ろす。
 その威厳に、思わず玲も正座をしてしまった。

 まるで親が子を叱りつけるように見えるその光景。
 そこに、この騒ぎで目を覚ました黒河が部屋から出てきた。



「玲ちゃぁん、なにがあった……っ……え!?」

「ああクロさん、起きたんですね……」

「お邪魔してまーす」



 異様な空気。

 正座する秘書に……男性の客。
 そこに、なにも知らない黒河が入ってきたのだ。



「な、なに!? どうしたんだい!?」










「……ってワケです。で、こちらが佐川俊介さん」

「どうも」

「佐川……俊介……?」

「ええ、どうかしました?」

「いや……気のせいだと思う」

「え?」



 腕を組み、なにやらうんうん唸っている黒河。
 一方佐川は、ニヤニヤと黒河を見ている。



「んー……」

「クロさん?」


「ふーん」

「……なにかあったんですか? 佐川さんも」



 うんうん、ニヤニヤ


 なにやら気持ちの悪い沈黙が続く。
 すると、にやけ顔の佐川が口を開いた。



「おい、黒河」

「えっ」

「まだ気付かねえの?」

「……やっぱり、そうかい?」




 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ