黒河探偵事務所

□セクハラ刑事にご用心
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「……へぇ、そんな事したのか」

「ええ、怪我してるのにですよ」


「まぁ、その時倒れなかっただけマシじゃないか」

「まぁ、そうですが……もう少し自分の身体を大事にして欲しいです」



 男は何故、ここまで楽しそうに話を聞いてくれるのかはわからない。
 どうして、ここまで黒河に興味を持つのか。


 ただ黒河の話をしていると、ひどく懐かしいような、そんな表情をする。



「そういえば私、まだお名前を伺っていないんですが……」

「あぁ、そうだったな。俺は佐川俊介ってんだ」

「佐川さん……ですか」



 なにやらコートの内ポケットをまさぐり、黒っぽい手帳みたいなモノを取り出す佐川。
 その手帳にキラリと光る紋章は……。



「えーと、一応こういうモンだ」

「……っ!!」




 警察手帳。

 見間違いではない。
 佐川の手にするその手帳には、警察を表す旭日章が。
 そして、その下にはしっかりと"駛街警察署"と記されていた。



「けけけ警察!?」

「ああ、名乗るのが遅れて申し訳ねえ」

「え、え!? 私なにもしてないっ!」

「いや、聞いてくれ」

「もしかして、この前、隣のお店の飾りブッ壊しちゃった事かしら!?」

「いや、あのさ」

「でも、ちゃんと弁償したし! 警察のお世話になるようなことは全然……っ!」

「おーい」

「あ、それとも……!」

「落ち着け!!」
「はいッ!」



 佐川は、涙目で暴走する玲の肩を揺さぶり、静止をかける。
 しかしまだ落ち着かない玲に『落ち着け、落ち着け』と、暗示のように言い続けた。



「……大丈夫か?」

「は、はい」

「警察手帳見せただけでここまで驚かれたのは初めてだ」

「でも……警察の方がなんで……?」

「俺、別にアンタを捕まえに来たわけじゃねえ。黒河さんに用があるんだ」

「く、クロさん何かしたのッッ!?」

「だーかーら、落ち着けって!!」


 
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