黒河探偵事務所

□メイドの悲劇【後編】
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「黒河さんっ! でも……これだけの部屋数でどうやって!?」

「うん……1部屋ずつ見ていくのはかなりの時間がかかる」

「それじゃあ玲さんがっ……!」

「ここで麻袋が見つかった。この辺りで牧田の部屋を割り出さないと……」



 玲が危険に晒されている。

 そう考えるだけで焦ってしまい、ロクにが頭が回らない。



 わからない……!





『黒河さん、落ち着いてくださいっ!』

『アナタが……アナタが冷静にならないと、玲さんは……戻って来れないっ……』

『玲さんを……助けてあげて』





 あの時の由那の言葉が頭をよぎる。


 そうだ。

 僕しか玲ちゃんを助けられない。





 まずは牧田の部屋。

 どこだ? 手がかりは……。




『……テレビです。アニメ……』

『平日の昼に? たしかアニメは』

『えっと、多分、衛星放送かなーって』





 衛星放送。





「……っそうだ! アンテナ!」

「え? く、黒河さん?」

「由那さん! 2階の部屋で衛星放送のアンテナを捜してください!」

「えっ、えっ? なんで……?」

「いいから! 訳は後で話します!」




 2階。

 アンテナのある部屋。


 これでかなり部屋が割り出せるはずだ……!




「黒河さん! あそこに1つありますよ!」



 幸い2階でアンテナのある部屋は近くの1部屋だった。



「よし! 行くぞ!!」

「えっ……ちょ、ちょっと待ってください!!」











 息を切らした2人は、アンテナの真下の部屋にたどり着いた。



「ハァ……ハァッ……ここか……な?」

「ハァッ……な? って……それじゃ……ダメじゃないですかぁッ……」

「な、中の音とか……聞こえない……かな」



 ドアに耳を付ける二人。

 刹那、2人は一斉に目を見開いた。





『テメェ……っ! なにしやがる!!』

『……っ……や、め……』

『フン……もういい。お前、死ねよ』





 青ざめる二人。




「くっ、黒河さんっ」

「こ、ここに決定!! よし、突入!」



 黒河がドアノブに手を掛ける。
 しかし案の定、カギが掛っていて開かなかった。



「チッ……どうするか……」

「早くしないと……れ、玲さぁん」

「よし、強行突破、いくぞ!」



 黒河はそう言うと、近くにあった消火器を手に取り、部屋の窓ガラスを睨みつけた。



「由那さん離れて、破片が飛ぶよ」

「っ、ええ!? ダメダメ! 勝手にガラス割っちゃダメですよ!!」

「玲ちゃんの方が大事だよ…………、っと!!」


 
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