黒河探偵事務所
□メイドの悲劇【後編】
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「黒河さん、落ち着いてくださいっ!」
「え……っ」
「アナタが……アナタがが冷静にならないと、玲さんは……戻って来れないっ……!」
「由、那……さん……」
「玲さんの身に何かあったら私が耐えられない……だから……!」
「……っ」
「玲さんを……助けてあげてください……!!」
由那はそう言うと、その場に座り込んでしまった。
それを見た黒河は、俯いていた顔を上げ、グッと拳を握り締めた。
「任せてください。玲ちゃんは……必ず取り戻す……!」
そして再び地図に視線を戻し、着々とペンを進めていった。
「黒河さん、ここは……」
「……ああ、牧田の住所までは完全に調べきっていなかったけど……きっとここだ」
1棟のアパート。
「ここに可能性をかけるか……」
「はいっ」
その時、軽い機械音が部屋にこだました。
「……何ですか?」
「ああ、僕のケータイだ。ちょっと失礼」
「ず、随分シンプルなんですね……」
由那が「せめて着メロにしようよ」と思ったのはつかの間。黒河の一言により、部屋の空気がガラッと変わった。
「はい、もしも……っ、玲ちゃん!?」
「え、ええっ!?」