黒河探偵事務所

□メイドの悲劇【後編】
2ページ/18ページ




「黒河さん、落ち着いてくださいっ!」

「え……っ」

「アナタが……アナタがが冷静にならないと、玲さんは……戻って来れないっ……!」

「由、那……さん……」

「玲さんの身に何かあったら私が耐えられない……だから……!」

「……っ」

「玲さんを……助けてあげてください……!!」



 由那はそう言うと、その場に座り込んでしまった。

 それを見た黒河は、俯いていた顔を上げ、グッと拳を握り締めた。


「任せてください。玲ちゃんは……必ず取り戻す……!」



 そして再び地図に視線を戻し、着々とペンを進めていった。









「黒河さん、ここは……」

「……ああ、牧田の住所までは完全に調べきっていなかったけど……きっとここだ」





 1棟のアパート。





「ここに可能性をかけるか……」

「はいっ」



 その時、軽い機械音が部屋にこだました。



「……何ですか?」

「ああ、僕のケータイだ。ちょっと失礼」

「ず、随分シンプルなんですね……」



 由那が「せめて着メロにしようよ」と思ったのはつかの間。黒河の一言により、部屋の空気がガラッと変わった。



「はい、もしも……っ、玲ちゃん!?」

「え、ええっ!?」


 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ