黒河探偵事務所
□メイドの悲劇【前編】
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「……名前は牧田和男、年齢36歳、普通の商業会社に勤務中……っと」
「ふぅん……。イイ歳いってるんですね」
デスクに手をつき、束ねてある資料を見ながら玲に説明する黒河。
すると、自分の資料の中から数枚の写真を取り出し、玲に手渡した。
「一昨日から少し後をつけてみたんだ」
「……ほんとだ! この男の前にいる女の人……由那さん!」
黒河が撮ってきた写真を片手に声を上げる玲。そこに写っているのは、紛れもなく牧田和男であった。
「それにほら、見てごらん」
「あっ! 紙袋!」
「由那さんの証言と確かに一致している。まずヤツで間違いないだろう」
黒河は椅子に腰掛け、複雑な表情で玲を見た。
「……でも……まだ牧田をおさえるには証拠が不十分なんだ」
「はぁ」
「そこでひとつ、玲ちゃんに協力して欲しい」
「えっ……」