黒河探偵事務所
□memory【後編】《連載中》
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「拳銃……やて?」
「ええ。そして実際、今日栞ちゃんの身に危険が迫ってます」
「誰も悪ぅない、事故やのに……そんなん、全てを無理矢理自分の姉ちゃんになすりつけとるようなもんやないけ……!」
「でも、悠子さんはそうは思えなかったみたいですね……」
「あっ、クロさん! 第3倉庫、あれじゃないですか!」
黒河の焦る気持ちが出たのか、思いきりブレーキを掛けてしまい、3人の身体は大きく揺さぶられた。
そして、いち早く神崎が車から飛び出し駆け出す。
「栞チャン!!」
後を追った黒河達が見たものは、ガラリと何も無く広い倉庫。
その中で、少し距離を置いて立ち止まった神崎、そして――。
「お、おじさん……っ」
「アンタ達……何なのよ!!」
必死の形相で、栞を捕まえて離さない悠子。
そして、そんな悠子を振りほどこうと必死でもがく栞だった。
「おじさん達は、私の信頼してるっ……、と、友達だもん! 悠子お姉ちゃん、離して!」
「こんな奴らとつるんでるから、悪い子になるのよ! ちょっと、暴れないで!!」
「やだ!! そんな事、ない!! お姉ちゃんより……ずっと、ずっと、いい友達だよ!」
「し、栞チャン……っ」
神崎が、必死で振りほどこうと暴れる栞を見て唇を噛む。
今、悠子の手には銃が持たれていない。
チャンスかもしれない。
そう、黒河が声を上げようとした……その時。
「栞っ!」
「栞……っ、悠子ちゃん……!?」
「お父さん! お母さん!」
倉庫に駆け込んできたのは、栞の両親……望月夫妻だった。
「黒河さん!? な、なんでここに!?」
「も、望月さんこそ……っ!」
「私達は……。い、妹に呼ばれたから……」
困惑した表情で、悠子と黒河達を交互に見る紗江。
賢治は、眉を寄せて栞を抱える悠子を見ている。
一方悠子は、望月夫妻に冷めた笑みを向けていた。
「ふぅん、その人達、お姉ちゃんの知り合いなのね……」
「ゆ、悠子?」
「まあいいわ。みんな揃った……やっと、やっと……終わるのね」
「お姉ちゃん……?」
ただならぬ悠子の雰囲気に、栞の動きが止まった。
「お姉ちゃん達……なんでここに呼んだか、わかる?」
「栞が怪我してるって……電話してきたのは悠子でしょう?」
「怪我なんかしてないわ。アンタ達を呼び出す口実に決まってるじゃない」
「口実って……。ど、どういう意味?」
「今日で全てを終らせる。お姉ちゃん、アンタに罪を償わせるわ」
「罪……?」
紗江が困惑の表情を露にすると、倉庫に悠子の冷たい笑い声が響いた。
「27年前、アンタはお父さんとお母さんを殺した」
「えっ……」
「殺したのよ。アンタが! アンタが線路に落ちなきゃ、お父さんとお母さんは死ななかった!!」
「ち、違う……あれは事故だって。不幸な事故だって……みんな……」
「アンタが線路際で遊ぶなんて馬鹿な真似するから……! しかも、そんな事をしておきながら、アンタは幸せそうに所帯を持ってる」
「そんな……っ」
「それに……」
怒りなのか。悠子はブルブル震えている。
「好きだったのに!!」
そんな悠子から、一筋の涙が頬を伝った。