黒河探偵事務所

□関西弁のアイツ
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「お客……来ませんねぇ」

「うーん」

「暇……、ですねぇ」

「ああ」



 少し早めの春を迎え始める頃。
 黒河探偵事務所は、依頼が無い事にに悩んでいた。



「あーあ、この前までは警察の方の依頼もあったのになぁ」

「ま……、ゆっくりできるからいいじゃないか」



 事務所の暖房を『弱』にしていても暖かいこの頃。
 暇を持て余している2人は、眠気に襲われるばかりであった。


 先日。セクハラ刑事こと佐川刑事に依頼され、少し難しい事件を解決させたところだ。

 依頼の内容は“犯人探し”。

 少ない手がかりで犯人の居場所を割り出すのが黒河の仕事だった。
 ついでに捜査の手伝いをしたりして、佐川の手伝いをしたが……。


 事件が粗方片付くと、依頼もなければ仕事も無い……そんな事務所へ戻らなければならなかった。







第五章
 関西弁のアイツ







「あー、暇だぁ、玲ちゃん」

「そんな事言われても……。お昼寝でもしたらどうですか?」

「さっきたっぷり寝たから、もう眠くないや」

「そうですよねぇ……」



 頬に片手をあて、考え込む。


 手軽で、暇を潰せること……。




「そうだ、クロさん」

「ん?」

「トランプしません?」





 それからだった。

 2人の、白熱とした闘いが始まったのは……。









「……」
「……」

「…………あ」

「やった! クロさん、ババー!」

「僕はババじゃない! どうせならジジだ!」

「なに子供みたいな事言ってんですか!」


「つ、次……神経衰弱しよう」

「えー? クロさん、頭脳系はめちゃくちゃ強いじゃないですか。神経衰弱なんて論外です」

「だって、さっきから僕がババばっかだもん……」

「そりゃクロさんが弱いからですよ! ほら、もう1回しましょう?」



 さっさとカードがきられ、あっという間に2人の前にカードが配られた。

 今のところ黒河が1勝6敗。


 玲の話によると。
 黒河の手持ち札にババがある時、玲の手がババへ伸びた瞬間に眉がピクリと動くらしい。

 そのせいで、ババの場所はすぐにわかる。



「クロさん、バレバレですよ?」

「うー……」

「……ほらこれでしょ? ババ」

「……!!」

「もう、お面とか付けてしたらどうですか?」



 そういう玲の肩は、笑いを堪えてか大きく揺れていた。
 悔しくて、自然と真剣な顔をする黒河を見ていたら笑える。

 玲が札を取る番。
 黒河が片手で顔を覆ったのを見て、笑い飛 ばそうとした――


 ――その時。


 
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