黒河探偵事務所

□メイドの悲劇【後編】
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 玲が男に拉致されてから、黒河達はすぐに事務所に戻っていた。

 二人とも青ざめた顔で頭を抱えている。



「あの男……牧田だ……っ」

「わ、私のせいだ……あの時玲さんに頼っていなかったら……」

「由那さんは……悪くないです」

「で、でも……っ!」



 由那が目に涙を浮かべて何かを言おうとしたが、黒河はそれを制した。



「ごちゃごちゃ言っててもキリがない。行動に移さないと」

「……そう、ですね」

「まずは……牧田と玲ちゃんの居場所だ」









「これを見てください」


 黒河は大きな地図をテーブルに広げた
 そして、赤いペンで印を打ち始めた。



「ここが裏路地、牧田はここからこう逃走した……」



 地図に、ツーと線を引き始めた。すると……。



「ここまでは一本道……」

「でもっ……ここからは道が分かれますよ!」



 確かに、ペン先は2つの分かれ道を指している。だが、黒河は更に右にペンを進めた。



「えっ……なんで右の道なんですか?」

「左側の道は今何をしている?」

「え?」

「このあいだ、ここに大きな雷が落ちたのは知ってるかい?」

「あ、はい。凄い大きかったみたいで……焼けたり砕けたりで今でもすごい…………あっ」


「そう、大きな修復工事をしている」

「そっか……だから車は通れない……」

「よって右の道となる訳だ」



 こうして推理していく黒河は、誰から見ても至って冷静に見える……が。



「っ……黒河さん……」



 僅かながら、黒河の持つペン先は震えていた。



「急がないと……玲……ちゃん……っ!」


 
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