Memorise ― 僕らがいた証 ―
□Memorise 最終章 Memorise― ありがとう ―
1ページ/3ページ
Last game
Memories―― ありがとう ――
こころが消えた後、涼矢がこころの座っていた椅子の上に紙があるのを見つけた。
それを拾って、ポケットに入れ、そのまま表彰式に出た。
トロフィーをもらった。メダルをもらった。一位という功績をたたえられた。それでも彼らは満たされた気持にはならなかった。
「……スズ、もう泣くなよ」
アリーナを出て、彼らは公園に行った。よく、こころも一緒に来た公園だ。
ブランコに座ったまま泣き続ける美鈴に、美鈴の隣のブランコを揺らしながら、勇斗が言う。
「行くなら行くって言えよな……」
蓮がつぶやくように言う。
「きっと、ぼくらに気を使わせたくなかったんだよ」
「ったく、ココちゃんらしいから、怒れねーし……」
博明と史也が苦笑気味に、さびしそうに言った。
「俺、ココ先輩にありがとうって、言ってなかったのに……」
独り言のように言って、らしくないやと誠一が笑った。
「一番にこのトロフィー抱えて、笑ってほしかったんだけどな……」
涼矢は抱えたトロフィーを見つめながら言う。
「たった四カ月しか一緒にいなかったのに……ずっとそばにいてくれたような気がする」
必死に涙を止めようとしながら、美鈴が呟いた。
メンバーたちの顔は夕日に照らされ、赤く染められている。いつもならその隣にもう一つの笑顔があった。
「……太陽みたいなやつだったよな」
蓮が漏らした呟きに、全員が同意した。
辛いとき、いつも励ましてくれた。
不安なとき、大丈夫だよと、笑ってくれた。
ピンチの時、誰よりも大きな声で応援してくれた。
「長い時間じゃなくていいから、もう一度だけあって、ありがとうって言いたいな……」
『ありがとう』その一言が一番伝えたい言葉だった。
「……あ、忘れてた」
涼矢はトロフィーをベンチに置いて、ポケットから紙を取り出した。仲間たちが怪訝そうにそれを見る。
「これ、ココが座ってた椅子の上にあった」
その場にいた全員が、ハッと息をのんだ。涼矢はそれを、そっと開く。
小さな文字が並んでいた。それは、まぎれもなく、こころの文字。