Memorise ― 僕らがいた証 ―
□Memorise 第五章 みんなと過ごす時間― 永遠に続けばいい ―
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Fifth game
みんなと過ごす時間―― 永遠に続けばいい ――
その後も、最上中バレー部は順調に勝ち進んでいった。さすがは強豪だ。
地区予選、県大会と勝ち進み、全国でも、強豪校を次々と下し、一週間後に、全国大会決勝を控えていた。
八月中旬……こころが消える日が、少しずつ近づいていた。そんなある日。
「リョウ、今日から一週間合宿って、無茶じゃないの?」
こころは隣の座席に座るキャプテンに訊ねた。そう、今はバスの中。
バレー部のレギュラーとマネージャー二人は、合宿に向かっているのである。ことの始まりは、少し前にさかのぼる。
―― 『合宿……?』
『あぁ。ちゃんと準備をしておけよ。最後の調整だ』
いつもと違う涼矢の強引さに、こころは負けたのだが……。
「いいじゃんココちゃん。私、楽しみだったの」
美鈴はにこにこしている。全員、楽しみらしく、はしゃいでいる。
勇斗と史也を隣の席にしたのは間違いだと思った。二人はすっかりテンションが上がって、騒いでいる。
「フミ!ユウ!五月蠅いよ!」
「いいじゃんいいじゃん!テンションあげてから練習したほうが、効率上がるんだよ!あ、ココも食べる?ポッキー」
勇斗がにっと笑って、ポッキーの箱を差し出す。こころは呆れたように溜息をつきつつ、ポッキーを受け取った。
「ごめんね、ココちゃん。ユウ、もともとこういうやつなんだよ。まったく。僕の従兄とは思えないよね?」
博明が苦笑気味にそう言った。その言葉にこころはえっ?と、おどろいた声を上げた。
「ヒロとユウって従兄弟同士なの?!」
「そうだよ。知らなかった?」
勇斗が笑いながら博明の肩をたたいた。
「ヒロの父親がうちの母さんの兄貴なんだってさ。だから、俺たちは小さいころからずーっと知ってるってわけ!」
「どっちかというとフミとユウのほうが……」
似てるよな、というような目で見るこころ。勇斗は笑って説明した。
「あぁ。フミはただの友達。確かにそっくりだから、よく兄弟に見られたりしたんだよなぁ。な?フミ?」
「おう!」
勇斗と史也が再び騒ぎ始める。博明とこころは、ダメだこりゃ、というような目で彼らを見て、その様子を見ながら美鈴は笑っている。
「おい、リョウ。もうすぐ着くよな?」
後ろの座席に座っていた蓮が、涼矢に声をかけた。
「あぁ。もうすぐ着く」
「じゃ、こいつ起こしとくぜ」
「こいつ?」
蓮は彼の隣にいるのであろうもう一人の部員を指差した。そういえば、誠一が静かだ。
こころは蓮と誠一の座席を覗き込んだ。
「あらら」
誠一はぐっすりと眠っていた。あれだけ騒がしかったのに、寝息を立てて、気持ちよさそうに眠っている。
「かわいい」
美鈴はくすっと笑った。いつの間にか全員がその寝顔を覗き込んでいた。
「いつもはすがすがしいくらいに生意気なのになー」
「こういうときはやたら可愛いよな。セイは」
騒いでいた二人もそういう。こころも思わずその言葉にうなずいてしまった。
いつもは確かに年下とは思えないような振る舞いばかりする誠一。しかし寝顔は幼い幼い。まだ十三歳の子供なのだ。
その表情に、こころは自分の弟……海里を重ねていた。