Memorise ― 僕らがいた証 ―
□Memorise 第一章 期限付きの命― 空から来た少女 ―
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First game
期限付きの命― 空から来た少女 ―
さわさわ、と柔らかく風が吹いている。水の中にいるような、気持ちいい感じ。
「ん……」
こころは目を開けた。眠って……いたのだろうか。いや、違う。とこころは気づいた。
「私、死んだんだよね……」
そう。こころは事故にあったのだ。信号無視のトラックにはねられたのだ。
痛くて、苦しかったのが、いきなり消えたことだけ覚えていた。
―― そう、あなたは死んだのです。
どこからともなく、女性の静かな声が聞こえた。こころは、静かにうなずく。
十五年か。短い人生だったな……なんて、しみじみ思っていた時。
――しかし、あなたにはもう一度生きてもらいます。
「……話が見えないんですが……」
こころがきょとんとすると、女性の声が、微かに微笑んだ。
――もう一度、別の世界で、生きてください。
「……私に拒否権は?」
――ありません。決まりですから。
漫才さながらのやり取りをしているうちに、こころの体を白い光が包んだ。
こころは複雑な心境だった。たった今死んで、それなのに、別の政界で生きるということに疑問さえ感じていた。
それに、家族だって心配だった。母親が死んで、そのあとで、父や、弟、幼い妹たちの面倒を見てきたのはこころだった。
そんな彼女の心境を感じ取ったのか、女性の声が言った。
――心配することはありません。あなたは、もう、死んだ人間なんですから。
その言葉に、こころは小さくうなずいた。
こころの体を包み込む、白い光が強くなる。温かく、柔らかい光が心地よくて、こころはゆっくりと目を閉じた。
(あぁ、私どうなるんだろう。もう、家族には会えないんだよね。
サヨナラ。父さん、カイ、メイ、ルイ…。ママ代わりの私がいなくなっても、頑張ってね……)
こころは、そんなことを考えていた。
ぼんやりとした意識が完全に消えたころには、こころは別の世界に飛んで行った。