Memorise ― 僕らがいた証 ―

□Memorise 第一章 期限付きの命― 空から来た少女 ―
1ページ/7ページ

First game 
期限付きの命― 空から来た少女 ―



さわさわ、と柔らかく風が吹いている。水の中にいるような、気持ちいい感じ。

「ん……」

こころは目を開けた。眠って……いたのだろうか。いや、違う。とこころは気づいた。

「私、死んだんだよね……」

 そう。こころは事故にあったのだ。信号無視のトラックにはねられたのだ。

痛くて、苦しかったのが、いきなり消えたことだけ覚えていた。

―― そう、あなたは死んだのです。

 どこからともなく、女性の静かな声が聞こえた。こころは、静かにうなずく。

 十五年か。短い人生だったな……なんて、しみじみ思っていた時。

――しかし、あなたにはもう一度生きてもらいます。

「……話が見えないんですが……」

こころがきょとんとすると、女性の声が、微かに微笑んだ。

――もう一度、別の世界で、生きてください。

「……私に拒否権は?」

――ありません。決まりですから。

 漫才さながらのやり取りをしているうちに、こころの体を白い光が包んだ。

 こころは複雑な心境だった。たった今死んで、それなのに、別の政界で生きるということに疑問さえ感じていた。

それに、家族だって心配だった。母親が死んで、そのあとで、父や、弟、幼い妹たちの面倒を見てきたのはこころだった。

そんな彼女の心境を感じ取ったのか、女性の声が言った。

――心配することはありません。あなたは、もう、死んだ人間なんですから。

その言葉に、こころは小さくうなずいた。


 こころの体を包み込む、白い光が強くなる。温かく、柔らかい光が心地よくて、こころはゆっくりと目を閉じた。

(あぁ、私どうなるんだろう。もう、家族には会えないんだよね。

サヨナラ。父さん、カイ、メイ、ルイ…。ママ代わりの私がいなくなっても、頑張ってね……)

こころは、そんなことを考えていた。

ぼんやりとした意識が完全に消えたころには、こころは別の世界に飛んで行った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ